研究課題/領域番号 |
17H06738
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
木原 貴行 名古屋大学, 情報学研究科, 講師 (80722701)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 計算可能性理論 / コルモゴロフ複雑性 / 位相次元論 / フラクタル次元 / 記述集合論 / 決定性公理 / 逆数学 / Weihrauch次数 |
研究実績の概要 |
当初の計画通り,本年度は主に,真理値表次数の可分距離空間への一般化の研究を行った.まず,記述集合論におけるJayne-Rogersの定理を応用することによって,完備可分距離空間について,ある神託を法として等しい真理値表次数構造を持つことと第一級ボレル同型であることが同値であることを示した.また,フラクタル次元論におけるポントリャーギン-シュニレルマンの特徴付け定理のAssouad次元への拡張を用いて,コンパクト距離空間の位相次元をコルモゴロフ複雑性によって特徴付けられることを示した.さらに,無限次元トポロジーにおけるChatyrkoとE. Polの手法を実効化し,特異点の凝縮と呼ばれる手法を用いて,2以上のnについて,n次元計算可能連結コンパクト距離空間の真理値表次数構造たちが万有可算上半束をなすことを示した.これらの結果をまとめた論文を現在投稿中である. その他,近年Day-Downey-Westrickが実関数の位相的複雑性を測る順序を導入していたが,本研究では,その順序構造の決定性公理の下での完全な特徴付けを与えた.その副産物として,実関数の不連続性の指標であるブルガン階数の記述集合論的特徴付けを非コンパクト空間へ一般化した.また,その手法のもうひとつの副産物として,実関数の並行連続Weihrauch次数が計算可能性理論における一様Martin予想と関連付けられることを示した. また,Udine大学のAlberto Marcone氏とSwansea大学のArno Pauly氏との共同研究において,二階算術におけるATR_0のWeihrauch次数における対応物に関する研究も実施し,一様性を考慮した場合のATR_0の振る舞いを明確にした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
真理値表次数の可分距離空間の一般化の研究について,いくつかの結果は当初の予定通りであったが,ポントリャーギン-シュニレルマンの定理のAssouad次元への拡張を用いることにより真理値表次数とコルモゴロフ複雑性を結び付けることができたのは想定外の結果であった.その他,ATR_0の研究についても想定以上の成果を上げており,引き続き研究を進める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
真理値表次数の可分距離空間の一般化の研究は一段落したため,当初の予定通り,次年度の主題は距離化不可能空間の計算論的分析とする予定である. ただし,無限次元トポロジーと粗次元論の計算論的分析に未研究の部分が残されているため,これについては,次年度も継続して研究を実施する.そのうち無限次元トポロジーについては,ATR_0との研究も合わせて,高位計算可能性理論の文脈での強無限次元カントール多様体の分析を行う.また,整数上のGolomb位相が強無限次元カントール多様体と類似の振る舞いをすることを発見しているため,Golomb位相のような距離化不可能位相との対比を見つつ研究を進める. 距離化不可能空間については,当初の予定通り,位相空間論におけるde Groot双対を陽定義と陰定義という定義可能性の双対と捉えることによって,陰定義可能性の構造分析を行う.これについてはde Groot双対空間を高階関数空間として取り扱えることが分かっており,高階計算可能性理論に新たな観点を導入できると期待している.
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備考 |
A. Marcone (Udine)およびA. Pauly (Swansea)と共同研究を行い,ATR_0の分析を行った.得られた成果は論文にする予定である. V. Gregoriades (Turin)は2週間名古屋に滞在し,記述集合論の議論を行った. A. Montalban (Berkeley)とL. B. Westrick (Connecticut)も名古屋に短期滞在し,研究の議論を行った.
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