研究計画に沿って,Pauly氏とNg氏との共同研究において,計算的枚挙の構造の位相的統一理論を構築し,枚挙次数の理論の先行研究の多くは位相的観点から統一的に解釈できることを明らかにした.また,一般位相空間論においてArhangel'skiiによって導入されたネットワークの概念の変種であるk-ネットワークを利用することによって高階関数空間の計算論を展開できることが知られているが,Ng氏との共同研究において,その観点を推し進め,本研究では様々な高階空間的性質の計算論的分離手法を与えた. また,記述集合論においては,ボレル可測関数の分解問題について,Ding氏,Semmes氏,Zhao氏との共同研究においてベール2級関数の分解に関しては完全解決を与えた. さらに,単独の研究において,非可分超距離化可能空間上のボレル可測関数の連続還元構造に対して,「非可算基数上の計算論」を応用することによって,その組合せ論的完全不変量を与えた.任意順序数上の計算論の概念が導入可能であることは,1960年に竹内外史によってゲーデルの構成可能宇宙の研究において導入されて以降,古くから知られていたが,本研究成果は,非可算基数上の計算論の,おそらく歴史上最初の具体的応用例を与えるものでもあると思われる. その他,Weihrauch束の研究においては,また,Pauly氏と共に,凸集合選択,有限選択,ソート原理の計算論的関係を明らかにした.Angles d'Auriac氏との共同研究では,解析的選択原理に関する問題に解決を与えた. また,単独研究においては,逆数学の未解決問題に解決を与えた.関連して,アレクサンダー双対などの公理的分析も行った.さらに,無限次元トポロジーの逆数学的結果を用いて,関数空間の計算論においてスコット・イデアル(ペアノ算術の超準モデルの標準部分)が重要な役割を担う理由を明らかにした.
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