研究課題/領域番号 |
17H06740
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤田 真司 名古屋大学, 理学研究科, 研究員 (30808118)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 天文学 / 電波天文学 / 分子雲 / 銀河系 / 分子雲衝突 / 大質量星 |
研究実績の概要 |
銀河系内の大質量星形成と分子雲衝突の関係を統一的・定量的に理解することを目指すために、本年度はまず、CO分子輝線サーベイとしてはかつてなく高角分解能でかつ広域に渡るFUGINプロジェクトの膨大なデータを取り扱うための解析環境 (ワークステーション) の整備を行った。これを用い、効率的なデータ解析を行うためのfitsデータの生成、および分子雲の構造同定アルゴリズムを適用するために必要なスクリプトの作成を行った。これらの作業は概ね完了させた。 そしてFUGINデータ内に含まれている領域 Spitzer bubble N4, N10, N14, N46 の解析を個別に行った。その結果、これらの領域でも分子雲同士の衝突を示す証拠を得ることができた。これにより、これらの領域における先行研究で挙げられていた大質量星形成シナリオの問題点が解消される見込みである。特にN4における成果については研究会「天の川銀河研究会2017」 (鹿児島大学) や日本天文学会2018年春季年会 (千葉大学) にて口頭発表した。 また、これらは現在投稿論文としても準備中である。この他にも、FUGINデータによって発見された他領域の分子雲衝突の結果についてミニワークショップ「分子雲衝突と大質量星形成」 (北海道大学) にて口頭発表を行い、FUGINデータから同定した分子雲についてもワークショップ「Science Workshop 2018 on FUGIN: The Galactic Plane Legacy Survey for Molecular Clouds」 (名古屋大学) にて初期成果を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題で挙げた本年度の当初目標は、「1. 対象の天体の領域の 3 次元データ (position - position - velocity) を生成する」, 「2. 領域中の分子雲を同定する」, 「3. 分子雲の可視化、及び物理量を導出する」,「4. 分子雲衝突の傍証となるブリッジ成分や相補的分布をアルゴリズムにより見出す (分子雲衝突の検証を行う)」である。1 と 2 に関しては概ね完了した。3 については、可視化に関しては問題なく遂行可能であるが、物理量に関しては天体までの距離の不定性 (例えば near or far 問題 など) のため統一的に決定することができず遅れをとっている。これらの解決策については現在他の研究者らと議論している。4 については既存のアルゴリズムの組み合わせで自動で行うのは難しいと判断し、保留としている。そのため、「研究が当初計画どおりに進まない時の対応」として予定していた個別領域での論文化をまず推進した。
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今後の研究の推進方策 |
まずはH29年度で遂行できなかった「分子雲衝突の傍証となるブリッジ成分や相補的分布をアルゴリズムにより見出す (分子雲衝突の検証を行う)」の解決を目指す。そのために、アルゴリズム的に分子雲衝突の傍証を検出するのではなく、機械学習を導入して検出するように方法を変更した。先行研究で知られている分子雲衝突天体の分子雲データなどを教育データとして、FUGINの膨大なデータから類似した特徴を持つ領域を自動で選定するものを予定している。この導入と解釈のために、有志で行われている機械学習の勉強会に参加する。 そして、個別天体としての成果およびFUGINデータ全域を通して明らかになった研究結果を投稿論文として執筆していく。また、国内外の研究会および学会にてこれらの成果発表を行っていく。
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