研究課題/領域番号 |
17H06746
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
鬼無 洋 愛知医科大学, 医学部, 講師 (70805275)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 腹膜透析 / 腹膜線維症 / リンパ管新生 / CTGF |
研究実績の概要 |
腹膜透析に伴う腹膜線維化は、患者の生命予後を悪化させる除水機能不全を呈し、そのメカニズムの解明と治療法の開発が望まれている。腹膜リンパ管吸収の増加は腹膜透析の限外濾過を減少させ、除水機能不全の一因となり得る。また、組織線維化の重要なメディエーターであるCTGFは腹膜線維症と関連する。この研究では腹膜リンパ管新生におけるCTGFの意義を検討し、CTGFを標的とした腹膜線維症の新しい治療法確立を目指す。 77名のヒト腹膜透析排液中のCTGFと主要なリンパ管成長因子であるVEGF-C蛋白濃度をELISAにて測定したところ、両者に有意な正の相関を認めた。このことからCTGFの腹膜リンパ管新生における有意な関連が示唆された。 続いて56名のヒト腹膜組織においてCTGFとVEGF-C、リンパ管マーカーであるLYVE-1とpodoplaninのmRNA発現を定量real-time PCRにて解析した。CTGFはVEGF-C、LYVE-1、podoplaninのいずれとも有意な正の相関を認めた。この結果により腹膜局所のCTGF発現が、リンパ管新生に関連していることが明らかとなった。 腹膜表面を覆っている腹膜中皮細胞は、さまざまなサイトカインや成長因子、マトリクス蛋白を産生し、腹膜の恒常性を制御する重要な細胞である。また、腹膜透析液の曝露や腹膜炎などにより腹膜におけるTGF-β発現が増加することが知られている。21名の腹膜透析患者由来の腹膜中皮細胞を培養しTGF-β1にて刺激したところ、細胞中のCTGFとVEGF-C発現は増加し、両者の増加の程度は正の相関を示した。このことにより、腹膜透析施行により腹膜中皮細胞において、CTGF産生による線維化の進行とVEGF-C産生によるリンパ管新生が相互に誘導されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度に予定していたヒト腹膜透析排液、ヒト腹膜組織、ヒト培養腹膜中皮細胞を用いた解析において、いずれもCTGFとリンパ管新生との有意な関連が得られており、仮説に沿った矛盾のない妥当な結果が得られているため、研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り下記の項目について推進していく。 1) ラット腹膜線維症モデルの横隔膜におけるCTGFとリンパ管マーカー、VEGF-Cとの関連を検討する。腹腔リンパ管吸収において横隔膜が主要な役割を担っていることが知られている。ヒト横隔膜検体の取り扱いは希少であるため、ラット腹膜線維症モデルを解析する。0.04%グルコン酸クロルヘキシジン(CG)を隔日で腹腔内に投与し、Day16で横隔膜を採取する。免疫組織化学的手法によりCTGF、VEGF-C、LYVE-1の発現を評価し、それらの相関を検討する。 2) CTGF欠損マウスを用いた腹膜リンパ管新生におけるCTGFの意義を検討する。通常のCTGF欠損マウスは胎生致死であるため、タモキシフェン誘導の時間依存的CTGF欠損マウスを用いる。野生型とCTGF欠損マウスのCGモデル(0.1% CG 4週間)検体を用いて、免疫組織化学的手法とreal-time PCR法により、VEGF-Cとリンパ管の発現を解析し、野生型とCTGF欠損との相違を評価する。
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