研究実績の概要 |
腹膜透析に伴う腹膜線維化は、患者の生命予後を悪化させる除水機能不全を呈し、そのメカニズムの解明と治療法の開発が望まれている。腹膜リンパ管吸収の増加は腹膜透析の限外濾過を減少させ、除水機能不全の一因となり得る。また、組織線維化の重要なメディエーターであるCTGFは腹膜線維症と関連する。この研究では腹膜リンパ管新生におけるCTGFの意義を検討し、CTGFを標的とした腹膜線維症の新しい治療法確立を目指す。 腹腔リンパ管吸収において横隔膜が主要な役割を担っていることが知られている。0.04%グルコン酸クロルヘキシジン(CG)を隔日で腹腔内に投与し、Day16で横隔膜を採取した(Control:n=5, CGモデル:n=9)。免疫組織化学的手法と定量real-time PCR法を用いた解析により、CGモデル横隔膜においてCTGF、VEGF-Cとリンパ管マーカーであるLYVE-1、podoplaninの発現は有意に増加していた。またCGモデル横隔膜において、CTGF、VEGF-C、LYVE-1の発現はそれぞれ有意な正の相関を示した。この結果によりCTGFと横隔膜リンパ管新生との有意な関連が示唆された。 さらにCTGF遺伝子欠損マウスを用いて、腹膜リンパ管新生におけるCTGFの意義を検討した。野生型とCTGF欠損マウスにPBSまたは0.1% CGを4週間腹腔内投与した後、壁側腹膜を採取した(各群 n=4)。免疫組織化学的手法と定量real-time PCR法を用いた解析により、LYVE-1、VEGF-Cとその受容体であるVEGFR-3の発現は、野生型PBS群と比較して野生型CGモデルで有意に増加し、野生型CGモデルと比較してCTGF欠損CGモデルで有意に減少した。この結果により腹膜線維症において、CTGF抑制は腹膜リンパ管新生を減少させる可能性が示唆された。
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