ビスホスホネート製剤関連顎骨壊死(BRONJ)の発症はビスホスホネート製剤(BPs)投与後に行った抜歯等の侵襲的歯科治療を契機とする疾患である.2003年に報告されて久しいが,未だ発症機序は不明であり,その予防法や治療法が確立されていない.本研究の目的は,ヒト歯髄幹細胞(DPSCs)由来エクソソームを用いて,その発症機序を解明し,治療法を確立することである.BPsの作用は破骨細胞の骨吸収を阻害することにあるが,BRONJでは破骨細胞以外の細胞(骨芽細胞や血管内皮細胞等)にも影響が及んでいると考えられる現象に,しばしば遭遇する.本研究では,まず骨髄由来間葉系幹細胞(MSCs)に注目したところ,BPsはMSCsの細胞増殖能や細胞遊走能を低下させ,アポトーシスを促進した.エクソソームはDPSCsの培養上清から超遠心法により分離した.粒径は約100nmであり,ウエスタンブロット法で特異的表面抗原であるCD63,CD81,CD9を確認した.また定量RT-PCR法でアポトーシス抑制や血管新生,抗炎症作用に関与する関連遺伝子を同定した.そこでBPsで処理したMSCsのエクソソームとの共培養による多分化能,細胞増殖能,細胞遊走能,関連遺伝子の発現量の変化について評価を開始した.またBPsおよびデキサメタゾンの投与後に抜歯し,臨床応用を想定したラットBRONJモデルを作製した.現在はBRONJに対するエクソソームの有用性について,その投与時期や投与量を含めて,形態学および組織学的,放射線学的に評価している.
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