真核細胞の中は、機能的かつ空間的に隔てられた様々な小器官(オルガネラ)に分かれている。シグナル伝達に関わる蛋白質の多くは、外部の情報を認識したあと、細胞内での局在が変化し相互作用や反応する相手に出会うことで活性化する。このような細胞のもつ蛋白質の局在変化を人工的に誘導することができれば、蛋白質の活性をコントロールする技術につながると考えられる。本研究では細胞内に新たに人工オルガネラとして蛋白質クラスターを作製し、その内外でのシグナル蛋白質の取り込みや放出によって蛋白質活性およびシグナル伝達の制御を目指した。 具体的にオリゴマー形成蛋白質ドメインを複数連結した“自己組織化ドメイン”を細胞内に発現させたところ、球状の蛋白質クラスターを形成することが共焦点レーザー顕微鏡での観察から明らかとなった。また、この蛋白質クラスターにFRB(FKBP-Rapamycin-binding)ドメインを融合させたものを発現させても同様に蛋白質クラスターを形成することが明らかとなった。さらに、FKBP12(FK506 binding protein)と蛍光タンパク質を連結させた融合蛋白質をサイトゾルに発現させ、小分子化合物であるラパマイシンを添加すると、蛋白質クラスターへと取り込ませることができた。今後、シグナル伝達に関わりの深いキナーゼやGTPaseなどの蛋白質に応用することで、細胞内における蛋白質のコンディショナルノックアウトシステムへと応用でき、細胞内シグナル伝達の解明に向けたツールとして期待される。
|