研究課題/領域番号 |
17H06760
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
中村 亮太 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90805938)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 台風 / 土砂移動 / 地形変化 / 高潮 / 海洋流動モデル |
研究実績の概要 |
当該年度では,(1)低気圧を外力とした波浪・高潮の数値算定精度に関する海洋流動モデル間の相互比較と高度化に関する基礎的検討,(2)2017年台風18号にともなう三河湾内の干潟における地形変化を対象として,複数の数値計算モデルを組み合わせた数値計算モデルを用いた予測を行った.以下(1),(2)に関する主要な論文は英文・和文として投稿中である. (1)既往の高潮災害(2014年根室における高潮浸水など)を対象として,現地調査結果を整理したのち,海洋循環モデルの予測精度の基礎的評価と数値計算モデルにおける相互比較を行った.数値計算モデルの相互比較には,非構造格子海洋流動モデルFVCOMとADCIRCを用いた.結果として,非構造格子海洋流動モデル間の数値算定結果には顕著な差異は確認できなかった.さらに,FVCOMに対して高解像度の非構造格子を用いた数値計算の結果,高潮にともなう浸水範囲を精度よく再現することができたため,海洋流動モデルとしてFVCOMを用いることとした. (2)複数の数値計算モデルを用いて,2017年台風18号にともなう三河湾の内湾における干潟上の地形変化を予測した.この数値計算モデルに用いた水深地形には,無人航空機を用いた写真測量から得られた数値地形を用いた.この波浪場モデルと海洋流動モデルを統合した土砂輸送数値計算モデルは干潟周辺領域において波浪や水面勾配にともなう複雑な流動場を数値算定していた.そして,同手法を用いることで,干潟上の地形変化(侵食・堆積の領域)を定性的に評価することができた.ただし,同モデルを用いた堆積・浸食予測結果は過小評価しており,今後さらなる改善が必要と考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年台風18号にともなう三河湾内の干潟上の地形変化を複数の数値計算モデルを用いて再現した.したがって,当初の研究目標であった平成29年度に発生した台風にともなう地形変化を対象として無人航空機を用いてその値を得ること,並びに数値計算モデルを開発してその評価を行うことを1年度目に行うことができた.ここで,外洋に面した沿岸域における地形変化より難しい予測である内湾における複雑な流動場にともなう地形変化の予測ができたため,本研究は当初の予定よりも進んでいると考えている.ただし,数値計算結果で得られた結果は定性的には符合していたが,定量的には過小評価していた.本研究の最終目的では数値計算モデルを用いた台風にともなう定量的な地形変化の予測であり,課題が残されているため「概ね順調に進展している」とした.また,平成30年度ではより広範囲の領域(太平洋側の沿岸域など)における地形変化に関しても研究を進める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
台風にともなう局所的な地形変化を当該年度では数値計算結果を用いて評価した.この数値算定結果は,定性的に合致していたが,地形変化の予測を過小評価しているため,この過小評価という課題を先に解決する.具体的な解決策として,土砂移動に関する適切な物理パラメータや適切な初期条件を設定するなどを試す.これらを試みて,開発した方法論で台風にともなう土砂移動・地形変化をより定量的に評価することができるようにする.また1年度目には,内湾の干潟という複雑な流動場が形成されている領域を対象として数値計算を行った.そのため2年度目には,外湾に面した地域や台風の影響を受けやすい漁港も対象として,平成30年度に発生する台風にともなう土砂移動や地形変化の数値計算を試みる.ここでは,他の研究者とも共同して地形変化や土砂移動をより定量的に評価できるように開発した数値計算モデルを改善する.
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