当該年度においては、複数の数値計算モデルを用いた台風にともなう土砂移動・地形変化の数値予測精度に関する検討・吟味と、昨年度にも研究対象としていた三河湾における干潟の地形変化に関して、継続的な現地調査に取り組んだ。 開発した複数の数値計算モデルによる地形変化予測の方法論に関しては、昨年度の時点では、台風にともなう地形変化機構の解明を可能とする定性的な評価は可能であるが、定量的な評価としてみると地形変化の計算結果は過小評価傾向であることが分かっていた。この理由としては、数値計算モデルによって算定した流動場が、干潟上にて大まかな傾向を捉えられているが、流速場の部分的な分布まで完全に合致することが難しいことが考えられる。さらに、海岸工学講演会における研究発表に対する質疑では、流動場の予測精度の改善のためには、研究対象としたような陸繋島(遮蔽物)が存在するトンボロ現象が見られる領域では、エネルギー平衡方程式に基づく波浪数値モデルではなく、他の支配方程式に基づく数値波浪モデルを使うほうが良いのではないかという指摘があった。そのため、他の数値計算手法を用いた波浪モデルを浅海域の地形変化の評価には試す必要があることが分かった。 地形変化予測の対象事例を増やすために、2018年度も愛知県三河湾東幡豆の干潟において、台風前後の継続的な観測活動に取り組んだ。そこでは、大阪湾に高潮被害をもたらした台風Jebi(2018)による地形変化も観測できた。そのため、上記の改善点を踏まえたうえで、その地形変化の数値的再現を試みることで数値計算モデルの改善を行うことができると考えており、モデルの改善を引き続き行っている。
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