研究課題/領域番号 |
17H06768
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
伊狩 亮 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (70804293)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 膀胱再生 / 組織工学 / 羊膜 |
研究実績の概要 |
消化管利用に代わる新たな医療材料を用いる方法として、本研究では口腔粘膜上皮細胞を尿路上皮の代替として用い、また膀胱筋層に胃平滑筋を用いて粘膜および筋層を持ち蓄尿および排尿が可能な膀胱組織を作製することを目的とした。 我々はこれまでに、1)免疫学的に寛容で無細胞化をする必要がなく、抗瘢痕効果のある羊膜上に、柔軟性に富む口腔粘膜上皮細胞を播種し、シート状にしたものと2)生分解性ポリ乳酸とカプロラクタムの共重合体の足場材料に、胃平滑筋細胞を播種しシート状にしたもののそれぞれを作成し、1)と2)を重ね合わせ、血流の豊富な大網に巻き付け腹腔内共培養を行なった。その結果、瘢痕形成の起こらない組織形成を予備的に確認することができた。 今回、我々は上皮に口腔粘膜細胞を播種した羊膜と筋層に胃平滑筋を播種したP(LA/CL)を腹腔内の大網にロールし3週間共培養を行った後に、膀胱欠損部位を形成し、そこに切り開いた大網ロール材料を貼付し縫合する方法で膀胱再建を行った。初めに、大網に3週間ロールした材料を免疫染色にて組織学的に評価したところ、上皮の形成と十分な筋層の形成が認められ、良好に再生が起こっていた。そこで、ウサギの膀胱頂部から三角部上部まで切り開き、欠損部位を形成し、そこに覆うようにしてその作成した材料で被せ、8点の単結紮と周囲を連続縫合した。その予後を現在は確認しているが、4ヶ月以上の生存が認められ、合併症の併発等は認められていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ⅰ.In vitroの実験 口腔粘膜細胞と胃平滑筋細胞の培養を行い、各細胞を羊膜とP(LA/CL)材料に播種し、免疫組織学的評価を行ったところ、各材料上に細胞が乗っていることを確認することが出来た。 Ⅱ.動物実験(ウサギの膀胱再生実験) ウサギの大網に作製した材料をロールし、3週間後の組織は良好に形成されていた。免疫組織学的にも上皮と筋層の形成が認められた。その組織を膀胱に貼付・縫合し予後を確認したところ、4ヶ月以上の生存が認められた。 Ⅲ. 再生結果の評価 術後6ヶ月経過した時点でレントゲン造影とウロダイナミクス検査、膀胱筋収縮力測定を行い評価する予定を今後しており、順調に実験は進行している。
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今後の研究の推進方策 |
現在、大網にロールした材料を膀胱欠損部位に貼付し、術後4ヶ月以上経過したが、合併症の併発等は認められていない。今後、術後6ヶ月時の膀胱造影とウロダイナミクス検査、さらに膀胱筋収縮力測定を行うことを予定しており、さらに、それが成功したら、次の段階として、n数を増加させ、実験期間を延長することを計画している。
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