本研究では、羊膜上に口腔粘膜上皮細胞を播種することで尿路上皮の代替として用い、また生体吸収性足場材料P(LA/CL)上に胃平滑筋を播種することで膀胱筋層として用い、粘膜および筋層を持ち蓄尿および排尿が可能な膀胱組織を作製することを目的として研究を行った。まず、細胞を播種した羊膜と足場材料P(LA/CL)を血流の豊富な腹腔内大網に巻き付け共培養を行なった。その結果、3週間後には、上皮と筋層に分かれた瘢痕形成の起こらない組織形成を確認することができた。そこで、次に、ウサギの膀胱上部から三角部にかけて切り開き、この腹腔内で熟成した再生組織を上から覆い被せ、縫合し、予後の組織形成と膀胱機能について検討を行った。その結果、6ヶ月後のX線膀胱造影で、羊膜と足場材料P(LA/CL)を膀胱に貼付縫合した群は、蠕動運動が確認でき、膀胱内圧測定においても膀胱の容量変化が認められた。また、膀胱容量も少し増加が認められた。さらに、羊膜と足場材料P(LA/CL)部分の膀胱筋収縮測定にて、正常な筋収縮が見られるかどうかを検討したところ、control(未材料)とほとんど変わらない程度の収縮が認められた。組織学的にも材料群は尿路上皮と筋層の形成が認められた。これらの結果より、羊膜と足場材料P(LA/CL)で膀胱拡大を行ったものは、尿路上皮と筋層を有した、膀胱機能的にも収縮や弛緩が可能な膀胱の拡大をすることが可能であることが分かった。
|