最終年度となる本年度は、平成29年度に遂行した「言語の文学的用法の研究」を中心とするメルロ=ポンティの中期のテクストの読解作業の成果に基づいて、メルロ=ポンティの思想の全体像を描き直すモノグラフの執筆に主に取り組んだ。その成果はナカニシヤ出版から書籍『身体の黒魔術、言語の白魔術――メルロ=ポンティにおける言語と実存』として刊行した。 また、こうした研究成果を背景に、京都大学で開催されたワークショップ「日本哲学研究のオルタナティブ――若手研究者の新しいキャリアと哲学の可能性」では口頭発表「哲学研究者にとってFDとは何か?――学際系学部出身の一哲学研究者の体験から」を、九州大学で開催されたリベラルサイエンス教育開発FD「これからの教養教育・学際教育を考える――先進事例と共に」では口頭発表「総人/人環における学際教育推進の課題と展望」を行なった。これらは今日の高等教育のあり方やそこにおいて哲学が果たしうる役割についての考察を含んでおり、本研究のさらなる展開可能性を示唆する発表であると言える。 加えて、本研究の主要な読解対象の一つである「言語の文学的用法の研究」講義を編集したBenedetta Zaccarello氏の来日に合わせて東京大学で開催された研究会Merleau-Ponty devant Valeryにおいて、メルロ=ポンティの文学論に関する研究成果の一部をフランス語で発表する機会を得、研究成果を国際的に発信することもできた。
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