以下のとおり、日仏における公務労使関係法制に関する研究に従事した。
一方では、フランス法につき、オランド政権において大幅に改革された公務員倫理法制を検討することにより、その改革の過程の中で、公務員参加法制が、意見表明と権利擁護の機会を公務員に与えていることを明らかにした。加えて、幹部公務員の任用に関する諮問機関の新設が、官僚の自律性の保障に資するものであることも指摘した。さらに、マクロン政権では、幹部公務員における政権への応答性を向上させる改革が進んでいるほか、労使間対話の迅速化を目指した労使関係法制の改革が進展していることを示した。後者の改革のうち、民間労使関係法制の改革は、既に2017年の法改正によりなされた。公務労使関係法制の改革についても、2019年3月に、法改正に向けた法案が下院に提出された。そのため、今後は、こうしたマクロン政権による改革の動向も踏まえながら研究を進めていく。
他方では、以上をはじめとしたフランスの公務労使関係法制研究を踏まえ、これを日本の公務労使関係法制と比較研究していくに際し、日本法に固有のものである人事院法制、特に、人事院勧告法制について研究する必要がある。その研究の一環として、人事院勧告の内容に基づかない給与減額措置を定めた国家公務員給与改定・臨時特例法が、人事院勧告法制を形骸化させることから憲法28条に違反するか等の点が扱われた判決(東京高判平成28年12月5日労判1169号74頁)を検討した。その結果として、主として、同判決は、高裁判決であるため、従前の最高裁判例を何ら変更するものではないものの、その従前の判例よりも人事院勧告違反が直接に問題となった事案を受け、その判例以上に人事院勧告の重要性を強調したものであると評価し、その一方で、同判決では、人事院勧告の手続上の法的拘束力が否定されたが、その理由には問題のあることを指摘する等した。
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