平成30年度は,開発したデータ解析手法の性能比較,および実データ解析を通じた購買行動と心理の把握を行った. 一つ目の性能比較については,追加の計算機シミュレーションの実施には至らなかったが,その一方で,計算時間短縮のための並列計算処理プログラムを追加し,計算時間の短縮に成功した.また,計算機シミュレーションで既に得られていた結果について,国際会議にて公表し,計算時間等について議論した. 二つ目の実データ解析の実施については,購買行動データの獲得には至らなかったが,準ずるデータとして,ある企業が保持するモニターの,ある買い物ウェブサイトのWeb閲覧履歴データを当該企業との受託研究の形で提供を受け,これを用いて開発手法の有用性,および閲覧行動とモニターの心理・属性の関係について把握を行った.結果,web閲覧行動パターンの推定については,開発手法の元となった既存手法(零過剰に非対応のモデルに基づく手法)とおおよそ近い結果が得られただけでなく,次のような零過剰モデル特有の特徴を確認できた.つまり,零過剰モデルでは,ある程度データの0を無視したようなパターンを推定するため,既存手法では閲覧しないとされる部分も閲覧しているようなパターンが得られた.web閲覧行動と心理・属性の関係については,解釈可能な結果を得ることができた.例えば,「年代が高い層ではDIY関連製品に関するページの閲覧についてはNMFで得られたパターンに従った閲覧をする」というものである.この結果は,DIYを閲覧していない高年層は閲覧パターンからしても閲覧しないということであり,例えばこの層へはDIYの閲覧の推薦は行わないほうがよい,といった解釈が可能である.逆に,若年層はパターンからするとDIY関連ページを閲覧する可能性が高いが,実際は閲覧してなく,DIY関連のプロモーションに反応する可能性がある,という解釈も可能である.
|