研究課題/領域番号 |
17H06781
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
郭 暁博 京都大学, 地域連携教育研究推進ユニット, 特定助教 (90808396)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 高大接続 |
研究実績の概要 |
平成29年度には米国における高大接続プログラムの実施・普及過程を明らかにするため、AP(Advanced Placement Program)について、予定通り調査を進めた。 文献調査では、制度設計の観点から、高大接続に関する米国の政策動向、各州の高大接続制度の特徴、高大接続の実施機関・組織の特徴を明らかにした。具体的には、まず、連邦政府、各州政府における高大接続政策の特徴を明らかにした。次に、具体的な事例として、アーカンソー州のAPに焦点を当て、そこにある地区や学校への支援政策、生徒への支援政策、AP教員の質を向上するための施策などを検討した。分析した結果、すべての地区が生徒のAP授業を受講する機会を確保することが求められている。 その際に、学区と学校の自主性と多様性を保障しなければならない。第二に、好事例を促進するために、適切なインセンティブと支援を提供することが必要である。第三に、縦横チームを構築し、大学、高等学校、地域、および管理機関の連携を促進することが重要である。アーカンソー州は、継続的な支援政策を通じて州内のAPの普及を実現した。第四に、AP教員について、アーカンソー州においては、APとPre-AP教員研修への参加義務がすべてのAP教員にづけられている。これらの施策を通じて、アーカンソー州は高校教育の質と大学進学率を向上する成果を成し遂げた。 訪問調査ではAP参加大学であるユタ大学を訪問したほか、AP実施校であるユタ州ソルトレークシティーにあるR高校を訪問し、APの受け入れ状況を調査することができた。さらに、AP参加大学ではないが、APと類似の高大接続プログラムのCE(Concurrent Enrollment)を提供しているソルトレーク・コミュニテイー・カレッジにもインタビュー調査を実施し、APとCEにおける制度上の差異やレベルの分け方について調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究計画としては、文献調査と訪問調査に加えて、AP参加大学に対するアンケートも実施する予定であったが、参加大学からの予備調査の充実のため、先行して現地への訪問調査を実施した。 本調査においては、連邦政府、各州政府における高大接続政策の特徴を明らかにした。また、個別の州や個別の大学におけるAPの受け入れ状況を把握することができた。今回の調査においては、州の政策や実情により、各大学・高校とAPとの関わりではその内容が大きく異なることが明確となった。訪問調査の実施によって画一的なアンケート調査のみでは把握できない州・大学ごとの違いについて把握することができた点で当初予定以上の成果を得られたと言える。また、今回の訪問調査ではAPだけでなく、類似する高大接続プログラムのCEの制度設計についても調査を行うことができた。APのみを対象とした調査だけでは把握できなかった高大接続プログラムごとの差異と共通性についても把握することができた。この点も含め、全体として当初の計画と同等の進展が得られたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策については、平成29年度までは主として米国の各州における高大接続政策の特徴やAPの参加大学とAPの実施高校の受け入れ・実施状況を明らかにすることに焦点を当てて研究を進めていた。 平成30年度については前年度までに明らかになった政策状況を基盤として、米国の各州において州境を越えてどのような連携が行われているのかを明らかにすることに焦点を当てる。 具体的には、全米大学アドミッション・カウンセリング協会(NACAC)が実施するAPに関する高校、大学、コーデイーネーターの関係者会議に参加し、さらに資料収集、関係者へのインタビューを通して、APの制度設計、関係者間の意思疎通、意思決定などのプロセスを明らかにする。特に AP の高大接続における位置づけ及び学校現場への普及・拡大の具体的方法、大学に受け入れられた経緯、連携方法などを考察する。最終的に高校と大学の接続を促進する制度的要素を探る。
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