今年度は昨年度のユタ大学に対する調査結果をもとに、ユタ州におけるAPの制度設計の特徴、政策支援の在り方及び大学における活用方法などを検討した。本研究の主目的はAP の高大接続における位置づけ及び学校現場への普及・拡大の具体的方法、大学に受け入れられた経緯、連携方法などを考察することである。 ユタ大学におけるAPの役割と機能を中心に聞き取りを行った結果、以下の役割と機能が見いだされた。1つ目は、ポテンシャルや意欲のある学生を受け入れる手段として活用されている。2つ目は多様性のある学生を受け入れる手段として活用されている。3つ目は入学後の教育効果についてである。米国の場合は、APの履修や試験への参加により、大学入学後の単位認定や奨学金の評価資料として用いられる場合が多く、時間的、金銭的な節約になると評価されている一方、日本の場合、相当する高大接続制度が存在していない。しかし、将来の入試改革の趣旨や方向性においては、ユタ州におけるAP制度が参考になると考えられる。特に、①大学入学における能力・適性等の判定、②大学に入学してくる学生の多様化への対応、③国際的通用性の確保の3点が示唆された。 一方、州の教育権限が強いユタ州の事例からは、州内の独自の高大接続プログラムを実施・普及させることは比較的推進しやすいが、より多様性・国際的通用性のある高大接続を目指すためには、APに類似する高大接続プログラムを実施することが重要である。今後、日本の高大接続における初等中等教育と高等教育の両者の連携を促進するためには、行政機関における適切な規制と助成という点を看過することができない。加えて、組織を安定的に運営するためには、規制と助成をもとに、各セクターの有機的な連携も重視しなければならない。
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