研究実績の概要 |
行列因子化はEisenbud氏により1980年代に導入された概念で, それらがなす三角圏は超曲面特異点上のコーエン・マコーレー加群の安定圏や特異点圏と同値になることが知られており, 盛んに研究されてきた. 近年, Eisenbud氏とPeeva氏の両氏により行列因子化の一般化である高次行列因子化の概念が導入された. 高次行列因子化は正則環とその中の正則列の組に対し定まる概念で, 付随する商環上のHMF加群と呼ばれる良いクラスの加群の射影分解と対応していることが知られている. 本年度は行列因子化のなす三角圏の一般化となるような高次行列因子化のなす三角圏を定義することを目指した. そのためには, 高次行列因子化の「シフト」という操作(自己関手)をうまく定義することが重要である. 通常の行列因子化においてシフトは非常に単純な操作であるが, 高次行列因子化においては自然に思いつくような方法で一般化した操作ではシフトを定めないことが分かった. しかしその後の研究で, 高次行列因子化に付随するHMF加群のsyzygyを取る操作に対応した操作をうまく定めることが出来ればよいということが分かった. この操作はまだ完全に定式化は出来ていないが, それが出来れば高次行列因子化のなす三角圏を構成出来ることが分かった. また, その三角圏が付随する商環の特異点圏と同値になることも分かった. この同値は通常の行列因子化のなす三角圏と付随する超曲面の特異点圏との同値の一般化となるものである.
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