研究課題/領域番号 |
17H06785
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
武石 拓也 京都大学, 数理解析研究所, 研究員 (20784490)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | Bost--Connes系 / 作用素環論 / C*-環の分類 / K-理論 |
研究実績の概要 |
Bost--Connes系の分類問題に関して,Bost--Connes C*-環が同型であればBost--Connes 力学系が同型であることを証明し,論文として発表した(理研の窪田陽介氏との共著論文).この結果とCornelissen--de Smit--Marcolli--Li--Smitのプレプリントの結果と合わせることにより,Bost--Connes系の同型ともとの体の同型が同値であることが得られる.これにより,Bost--Connes系の分類問題は当初の予想を裏切って肯定的な形で解かれた.発表した論文は査読付き雑誌に投稿中である.また昨年度中に研究集会での発表を3回行っている. K-理論の詳細な解析によりK-理論からガロア群を復元するというのがこの度用いられたアプローチである.非単純環を扱っているため,通常の単純環と比べると使える情報が多いはずであるが,イデアルの構造から得られる情報をどのように生かしたらいいのかについては,これまであまり明確ではなかった.そういったことを,非常に特別な場合ではあるが具体的に実現したという点で,単に未解決問題を解決したということに留まらない,影響の大きな結果が得られたと考えている.今回のアプローチでは自由アーベル群の接合積のK-理論に特化した証明を行ったため,実際に他の非単純C*-環でこの結果と同様のことをやるためには,このアプローチがほかの従順群接合積に対してどのように一般化されるかということを考えなければならない.こういった問題が長期的な課題として浮かび上がってきた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述のとおり最終目標としていた問題は,当初の予想を裏切って肯定的に解かれた.この点に関しては予定以上に進展したといえるが,一方で当初のアプローチにあった通り,UHF環をテンソルした時の同型問題については,未発表の結果があるもののやや遅れ気味である.当初の問題意識とは少し異なってきてしまうが,こちらの問題は非単純なC*-環が非自明に同型になることはどのように証明されるかという具体例となっているため,応用上の重要性がある.したがってこれが次年度の課題となる. そのため,総合的に判断するとおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
当初のアプローチにあったUHF環をテンソルしたときの同型問題については未解決のまま残っている.この問題自体もまた興味深く応用範囲も広いと思われるため,今後も継続してこちらの問題に取り組む予定である.まずは体が虚二次体の場合に,イデアルを有限個に減らした商C*-環の分類に関しての研究を完成させ,論文として仕上げる.その次のステップは,これを「極限」に持ち上げるという問題をであり,ここが最も困難であると思われる.UHF環をテンソルした場合,虚二次体のBost--Connes C*-環はすべて同型になるというのが予想であ る.この問題に少しでも迫れるように努力したいと思う. また,同時並行して,研究計画にある通り代数体由来の半群C*-環についての分類問題に取り掛かりたいと思う.これに関しては前年度までの技術が非常に役に立つと推定される.ただし,Bost--Connes C*-環の「基本パーツ」は自由アーベル群接合積の形をしていたのに対して,半群C*-環でそれに相当するものは非可換群でしかも捻じれのある群による接合積となっているため,その点ではこちらのほうが大変扱いにくい.ここで厄介な技術的問題が発生すると予想される.その反面,こちらはpurely infiniteな環になっているという点ではBost--Connes C*-環よりも扱いやすいといえる点である.そのため,これまでには使えなかったpurely infinite C*-環特有の技法が使える可能性がある.具体的にどのような技術が使えるかについて,今後検討していきたい.この問題に関しても海外の半群C*-環の専門家や分類理論の専門家と研究打ち合わせを行い,アイディアを出していきたい.
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