京都大学呼吸器内科における組織バンクに存在する正常肺とCOPD肺組織を用いて、細気管支の上皮構成細胞がCOPDの末梢気道病変に与える影響について、昨年度に続き引き続き検討を行った。ΔNP63陽性の基底細胞、CCSP陽性のクラブ細胞の数にはCOPD肺と正常肺で差を認めないが、COPD肺の末梢気道に存在するCCSP陽性のクラブ細胞においてアンチセリンプロテアーゼのひとつであるLEKTIが低下している可能性を示唆する結果が得られた。このLEKTIの発現低下が、末梢気道のプロテアーゼ活性増強と関連することが示された。 末梢気道上皮におけるアンチプロテアーゼ活性の減弱が、末梢気道病変の発症に関与しているかを検証するために、喫煙暴露刺激によるLEKTIの発現の乏しいことが示されているC/EBPαノックアウトマウスを用いた検討を行った。無治療の喫煙暴露C/EBPαノックアウトマウスに比較し、アンチセリンプロテアーゼ(BPTI)を投与しながら喫煙暴露を継続したC/EBPαノックアウトマウスでは、COPD末梢気道病変の指標のひとつである肺胞アタッチメントの破壊が抑制されることが示された。 また、前年度にマウスのlung slice培養を確立し、気道収縮物質であるアセチルコリン(カルバコール)を投与すると気道収縮を再現できることを確認していたが、このモデルにエラスターゼ処理を追加すると、気道収縮がより増強することを見出した。この現象をin vivoにて確認すべく、エラスターゼ気道内投与肺気腫モデルマウスにカルバコールを気道内投与した。結果、エラスターゼにカルバコールを追加したモデルではエラスターゼのみ投与したモデルに比べ、肺胞アタッチメントの破壊が増強することが病理学的に明らかになった。このモデルにおける末梢気道上皮細胞のプロテアーゼ、アンチプロテアーゼ不均衡を今後検証する予定である。
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