研究実績の概要 |
本研究では、言語機能野間の機能的結合を術中に評価し、術前術後の言語機能を評価することにより言語皮質野および白質線維路の機能を詳細に解明することを目的とした。 非侵襲的な脳白質線維路を描出する方法として、MRIの拡散強調画像を用いたトラクトグラフィーの新たな解析方法であるspherical deconvolution法の導入を試みた。これにより、従来法と比べてより簡便でかつ正確な脳白質線維路を描出することができるようになった。特に、腹側言語路として報告されているinferior fronto-occipital fasciculus, uncinate fasciculus, inferior longitudinal fasciculusの描出や、新たな白質線維路と報告されているfrontal aslant fasciculusの描出が可能となった。 侵襲的な方法としては、これまで術中に皮質の単発電気刺激を行うことで皮質-皮質間誘発電位(cortico-cortical evoked potential: CCEP)を記録し、言語機能野間の機能的結合が確認されていた。主に覚醒下手術および術前の神経機能画像を併用して記録しているため、全身麻酔下でも行える電気生理学的モニタリング法としての確立を目指し、全身麻酔下と覚醒時でのCCEPの波形の比較検討を行った。その結果、覚醒時の方が全身麻酔下と比べてCCEPの振幅の増大を認める傾向にあるが、CCEPの反応部位の分布の変化は麻酔の影響を受けないことを示した。これにより全身麻酔下のみでも言語機能モニタリングとして有用であることを示し、国内での学術集会にて発表した。 今後は、これらの解析手法を併用して術前後の言語機能評価を総合的に検証していく予定である。今後症例を重ねることで言語機能温存に関して知見を得て行くことが必要であると考えられた。
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