研究課題/領域番号 |
17H06818
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
樋渡 直 京都大学, 医学研究科, 医員 (10808778)
|
研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
|
キーワード | 声帯瘢痕 / 核内レセプター / TGF-β1 / NR4A1 |
研究実績の概要 |
昨年度の成果として、下記課題1と課題2-i)の損傷後急性期モデルの実験を終了した。同結果を第30回日本喉頭科学会総会・学術講演会にて「核内レセプターNR4A1の声帯線維化への関与」として、またCombined Otolaryngological Society Meeting 2018 (アメリカ ナショナルハーバー)にて"Preliminary study of the effects of Cytosporone-B, a novel anti-fibrotic agent, on vocal fold fibroblasts"としてそれぞれ口演を行った。 1.声帯線維芽細胞に対するCsn-Bの効果を確認 (In vitro実験): ラット正常声帯あるいはヒト正常声帯由来の線維芽細胞を培養し、TGF-β1刺激にて線維化を誘導した。この細胞に対しCsn-Bを培養液中に添加した。濃度は先行研究での1 μMに加え、適宜最適濃度を検討する。コラーゲン遺伝子の発現をPCRで、筋線維芽細胞への分化を免疫組織科学で、組織拘縮の指標としてゲルアッセイを行い、声帯線維芽細胞の線維化抑制効果を確認した。 2.ラット声帯瘢痕モデルで至適量・濃度の探索:我々のグループにて確立された内視鏡下でのSprague-Dawleyラットの声帯傷害モデルを用いた。損傷後の治療介入のタイミングを、急性期と慢性期に大別して行った。 i)急性期介入モデル 声帯損傷後1週間以内にCsn-Bを内視鏡下に声帯粘膜固有層に注入投与した。急性期に介入する役割は、声帯瘢痕の予防にあり、実臨床上では急性炎症時への応用を想定してした。注入後、ラットの声帯瘢痕が成熟する2ヶ月目まで各タイムポイントで声帯を採取し、遺伝子発現を確認し、Csn-Bの至適量を同定した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
立案時の2年計画ロードマップのうち、約半数の実験系を終了し、研究結果を第30回日本喉頭科学会総会・学術講演会で、またCombined Otolaryngological Society Meeting 2018にて発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は課題2-i)の急性期から慢性期の評価と、課題2-ii)と課題3を行う。 2.ラット声帯瘢痕モデルで至適量・濃度の探索:我々のグループにて確立された内視鏡下でのSprague-Dawleyラットの声帯傷害モデルを用いる。損傷後の治療介入のタイミングを、急性期と慢性期に大別して行う。 ii) 慢性期介入モデル 声帯損傷後2ヶ月にて同様にCsn-Bを注入投与する。こちらは実臨床上で多数を占める、音声酷使患者ですでに完成された瘢痕への投与を想定している。評価は急性期と同様である。 3.大動物での機能評価:ヒトでの応用を考慮する事前段階として、大動物での実際の声帯運動の改善を評価することが必須である。ラットでの至適投与量・濃度等の結果を本実験に応用する。ビーグル犬の声帯瘢痕モデルを作成し、手術用顕微鏡下にCsn-Bを注入する。瘢痕が成熟する6か月目にて喉頭を摘出し、空気力学的検査・声帯振動評価を行う。
|