研究実績の概要 |
網膜色素変性は遺伝性、進行性に網膜、特に視細胞が障害される疾患である。これまで神経細胞保護治療や、幹細胞移植など様々な戦力が研究されているが、いまだ治療法は確立されていない。本研究では、これまでに行った研究で原因遺伝子が特定された網膜色素変性患者のうちナンセンス変異を持つ患者由来のiPS細胞を樹立し、網膜組織に分化させたうえでstop codon readthrough作用のある複数の化合物、特にPTC124の効果を検証することで、臨床試験を行うための科学的根拠を示すとともに、至適用量を検討することを目的に開始した。 当該年度中にEYS遺伝子のc.8805C>A変異をhomozygousに持つ患者3人に説明を行い同意を得たうえで末梢血を採取、単核球にプラスミドを用いて山中因子を導入しiPS細胞を樹立した。幸い対象患者にはHBV, HCV, HIV, HTLV1などの感染症はなく、樹立したiPSについていずれもOct3/4,Nanogの未分化マーカーの発現が確認されている。現在これらの細胞を視細胞に分化誘導する作業をおこなっている。樹立したiPS細胞はバンク事業に寄与手続き中であり、今後他の研究者もアクセスし、有効に活用することも可能となる予定である。 またpde6bにナンセンス変異を持つrd1マウスを用いて、内服と硝子体注射での効果の違いを検討した。予備的な結果ではあるが硝子体注射で局所に高濃度で投与した方が効果が高い傾向を認めており、今後投与方法の改善という点からも期待される結果となっている。
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