本研究は、戦後日本における器楽教育の展開過程を明らかにすることを目的とし、具体的には次の二つのテーマからこの研究目的に迫ろうとするものである。 (A)1955~56 年度文部省実験学校・群馬県前橋市立天川小学校における器楽教育の研究 と、この研究に楽器を提供したトンボ楽器社の協力体制。 (B)1949 年に卓上木琴の製造を開始したコオロギ社における教育用木琴の開発の歴史。 テーマ(A)に関しては、天川小学校にて資料収集を行い、一次資料の発掘を行った。具体的には学校沿革史をはじめとする資料の閲覧と複写、過去の在職教員履歴書の閲覧、天川小学校が文部省の指定を受けていた当時の写真を集めたアルバムの閲覧と複写を、同校校長の立ち会いのもと行った。一方、テーマ(B)に関しては、コオロギ社の本社にて一次資料の探索を行ったが、残念ながら一次資料の多くはすでに廃棄されていた。しかし同社社長にインタビューをすることにより、同社設立の経緯などを知ることができた。この他、雑誌『教育音楽』(日本教育音楽協会発行)をはじめとする戦後の音楽教育雑誌、レコードなどを中心に器楽教育の実践に関する資料を収集した。またコオロギ社の製作するオルフ型木琴を購入し、その指導法と照らし合わせた。 これらの資料を分析・考察してまとめた研究成果の一部は、すでに音楽教育史学会で口頭発表し、神戸大学教育学会『研究論叢』第24号(2018年6月発行予定)に原著論文として掲載される予定である。 以上の研究実績は、器楽教育展開過程の研究に資するものとして意義があり、ひいては戦後の音楽教育の展開を知る手がかりとなるものであり、重要である。
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