研究課題/領域番号 |
17H06824
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
東 志保 大阪大学, 文学研究科, 助教 (00803165)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 映画学 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、10月~2月の間は、研究対象の3人の映像作家(イヴェンス、マルケル、ヴァルダ)が世界各地で旅をして映画を撮影した理由および作品の生成過程を知るために、二次資料の調査および講読を行った。その研究成果をまとめた上で、3月にオランダ、スイス、フランスに2週間半滞在し、一次資料の調査を行った。 オランダでは、ヨーロッパ・ヨリス・イヴェンス財団によるイヴェンス・アーカイブにてイヴェンスに関する資料を調査・収集した。スイスでは、ジュネーブで2011年に開催されたマルケルの大回顧展のコーディネーターを務めたクリストフ・シャザロンが集めたマルケルについての膨大な資料を収蔵するジュネーブ市現代美術基金を訪れ、資料の調査・収集を行った。フランスでは、パリの国立映画図書館(BIFI)・国立図書館(BNF)、リヨンのリュミエール研究所にて、ヴァルダ、マルケル、イヴェンスに関する追加資料を調査・収集した。 研究の一部の成果は、3月30日にアテネ・フランセ文化センターにて行われた、クリス・マルケルの『レベル5』上映会のレクチャーにて一般に公開した。 今後は、この調査をもとに更に研究を進め、平成30年5月の日本映像学会(既に発表申込受理済)でヴァルダの映像作品について、12月の日本映画学会にて、イヴェンスとマルケルの映像作品について発表を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イヴェンス、マルケル、ヴァルダの映像作品の関連性について、旅というキーワードから研究しているが、その生成過程について、収集した一次資料、二次資料が、今まで不明だった多くの点を明らかにしている。 イヴェンスについて、ヨーロッパ・ヨリス・イヴェンス財団館長のアンドレ・シュツフケンスから、最新の研究動向について意見交換し、一次資料以外にも多くの示唆を与えていただいた。マルケルに関しては、ジュネーブ市現代美術基金のイヴ・クリステン氏と意見交換を行い、貴重な資料にアクセスすることができた。ただ、平成30年5月にシネマテーク・フランセーズで開催される展覧会にて、マルケル本人がアトリエに残したアーカイブ資料から新たな情報が開示されるので、更なる調査を要するものの、それは研究計画で既に織り込み済みの案件である。ヴァルダについては、リュミエール研究所のアーカイブで、多くの資料に当たることができた。ヴァルダ本人は多忙ということでインタビューは実現できなかったが、夏にヴァルダの作品の配給会社に収蔵資料を見に行ける可能性が残されている。 研究の一部の成果は、3月30日にアテネ・フランセ文化センターにて行われた、クリス・マルケルの『レベル5』上映会のレクチャーにて一般に公開された。また、マルケルについての学術論文がフランスの映画雑誌CinemActionに掲載された。この雑誌は、既にフランスだけでなく、ポーランド、韓国の大学にて紹介されており、5月に行われるシネマテーク・フランセーズのマルケルの特集上映のトークイベントでも紹介される予定である。このようにマルケル研究の最新の成果を示す雑誌に寄稿し、3月のパリ第三大学での販売促進イベントで多くの研究者と意見交換できたことも、研究の順調な進展に大きく貢献している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度夏に、パリにて追加調査を行う予定である。具体的には、5月から7月にかけて開催される、シネマテーク・フランセーズのクリス・マルケル展覧会にて、新たに発見されたアーカイブ資料の調査を行う予定である。アーカイブ資料はデジタル化されシネマテーク・フランセーズの付属図書館にて開かれることになっており、その資料調査も現地で行う予定である。さらに、ヴァルダの作品の配給会社(シネ・タマリス)を訪れ、資料収集と調査を行う予定である。ヴァルダ本人へのインタビューも再度申し入れを行いたいと考えている。 このように、今後は資料の追加収集・調査を行うが、それと同時に、作品分析を行い、その研究成果を春と冬の学会にて発表、学術論文を大阪大学アート・メディア論研究室の紀要にて発表する予定である。 また、5月にはパリ第三大学から映画学の教授を招いて、マルケルについての公開講演会を企画するなど、今後もマルケル研究の国際的なネットワーク形成にも取り組みたいと考えている。
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