研究課題/領域番号 |
17H06829
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大久保 将貴 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (90807835)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 医療 / 介護 / 連携 / 統計的因果推論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,医療・介護の連携に焦点をあてながら,医療・介護組織の行動を分析することである.具体的には,診療・介護報酬改定や法改正等の制度変化,また組織属性や地域要因等の制度的環境の違いが,医療・介護組織の行動にどのような影響を及ぼすのかを明らかにすることが目的であった. この目的を達成するために本研究が採用する分析手法は,統計的因果推論とフィールド実験であった.近年の社会科学における計量分析では,因果関係をいかに識別するかに力点が置かれており,因果関係の識別における方法論の選択は重要な課題である. 医療・介護組織の連携行動を測定するためには,医療組織と介護組織に関するデータを連結する作業が必要となる.今年度は,この連結作業を中心におこなった.具体的には,『医療施設調査』『患者調査』『受領行動調査』『医師歯科医薬剤師調査』『病院報告』『社会医療診療行為別調査』『介護サービス施設・事業所調査』等の連結をおこなった.また政府統計の連結データについて,全病院の属性や様々な指標が掲載されている『病院年鑑』との連結可能性についても検討した. またこうした調査観察データを分析する統計的因果推論の手法について,新たな方法に関する研究報告や論文執筆をおこなった.具体的には,反事実的条件を用いた因果メカニズムの分析について検討し,既存の手法との比較をした.これらの手法は実際の医療・介護組織の連携行動分析で応用予定である.さらに,調査観察データを扱う際に生じるNonresponse Biasがどの程度生じるうるのか,またその場合にどのように補正するのかについても検討した.医療・介護組織のデータにおける欠票や欠測に応用する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
医療・介護組織の連携行動を分析するにあたっては,調査観察データを用いた因果推論とフィールド実験を予定していた.前者については,分析に必要となる政府統計データの連結作業は順調に進んでいる.一方で,フィールド実験については,サンプリングや実験準備を進めたものの,予算,研究期間,関係組織の合意の面で実施が困難な可能性が浮上した.フィールド実験が実施不可能な場合については,既に研究計画の段階で,「研究が当初の計画どおりに進まないときの対応と研究協力者からの支援」の箇所で明記していた.すなわち,フィールド実験の実施が困難になった場合には,政府統計データを用いた統計的因果推論による分析に絞るか,もしくは追加的にサーベイ実験をおこなう.
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今後の研究の推進方策 |
『医療施設調査』『患者調査』『受領行動調査』『医師歯科医薬剤師調査』『病院報告』『社会医療診療行為別調査』『介護サービス施設・事業所調査』を連結したデータの基礎的な分析をおこなう.また『医療施設調査』『病院報告』『介護サービス施設・事業所調査』については,統計法第33条に基づき調査票情報の利用申請をする.データ取得後に基礎的な分析をおこない,先の連結データと併せて分析可能かを検討する.医療・介護に代表される社会保障制度は変更が多く,また地域によっても異なる制度が多いため,外生的なショックを利用した因果推論の余地が残されている.今年度はそうした識別戦略に基づいて連結データの分析に着手する. また先述のようにフィールド実験については実施が困難な状況にあるため,申請書に記入している通り,調査観察データを用いた統計的因果推論もしくはサーベイ実験によって代替する.
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