研究課題/領域番号 |
17H06836
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤原 邦夫 大阪大学, 工学研究科, 助教 (60800852)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 熱工学 / 分子動力学 / 蒸発 / エネルギー輸送 |
研究実績の概要 |
オングストロームオーダーの領域において分子動力学で物理量を算出する手法として,まずはビリアルの手法を用いてエネルギー流束を算出する基盤技術の構築をおこなった.まず基礎的な系においてプログラムを作成し,局所におけるエネルギー,温度,圧力等の物理量が正確に計算・出力できていることを確認した.局所量の計算は1次元・2次元で計算が行えるようにプログラムを作成した.その後,研究目的である構造物近傍の熱流体現象の解明として,構造物内の液体の蒸発現象を模擬するための計算モデルの作成に取り組み,主要な計算モデルの作成を完了した.その後,局所量が確認可能となる適した計算条件の検討を行い,検討結果を基にして,液体と固体の濡れが異なる場合でスリット内の気液界面形状が異なる条件での計算を行った.まずは局所における物理量のゆらぎの特性を把握するために,局所における流束のプラス値とマイナス値を分離して1次元的・2次元的に出力した.その結果,壁面近傍での質量やエネルギーのゆらぎの量がバルク部と比較して顕著であることが分かり,壁面近傍の輸送現象の把握が重要であることがわかった.その後,具体的にスリット構造内の液体の蒸発時に壁面近傍の質量流束とエネルギー流束を2次元的に算出し,壁面近傍での質量流束とエネルギー流束の相関関係を詳細に把握した.得られた結果より,壁面の影響を受けていないバルク部では,従来の流体分子によるエネルギー輸送と同様のメカニズムであったが,壁面近傍では壁面との相互作用がエネルギー輸送量を減少させる傾向にあることが分かった.またその傾向は壁面原子と流体分子の相互作用の強さに依存することも明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,オングストロームオーダーの局所で,分子論的な観点から定義される熱力学量と輸送量を数値解析的に算出する汎用的な技術を構築する.そして構築した技術により,局所・瞬時の熱力学量がナノスケールの熱流体現象に及ぼす影響を詳細に解明する.現在までの進捗として,二次元的に局所的なエネルギー輸送量を求める手法の構築は完了し,実際にスリット内の液体の蒸発現象に適用を行った.その結果,壁面近傍の流体分子の質量・エネルギー輸送に関して,局所量の役割を明らかにすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
局所量の2次元分布の取得に関して別の手法も試し,比較検討を行う.その後,3次元的に局所量を求める手法の技術構築を行う.計算負荷を見極めた上で最適な計算手法を選択する.
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