本研究では、平成28年熊本地震で震度7の揺れを2回観測した益城町庁舎について、杭基礎被害の要因を実験と解析の両面から明らかにし、杭基礎建物の応答評価法の高度化に資することを目的としている。 本年度は、庁舎の応答に影響を及ぼしたと考えられる凝灰質粘性土と杭周地盤ばねの履歴特性に着目し検討を行った。前者については、前年度に現地で採取した地盤試料の繰返し三軸圧縮試験結果を分析し、応力-ひずみ関係の履歴特性を数学モデルに置き換えることで、杭への入力動となる敷地地盤の応答の計算に新たに取り入れた。後者については、関東地方の火山灰質粘性土地盤で行われた杭の原位置載荷試験のデータと、砂質土地盤および粘性土地盤中の杭を対象としたFEM解析の結果より、粘性土における杭-地盤間の剥離が繰返し加力下の杭周地盤の水平抵抗に与える影響を確認した。以上のような粘性土地盤の地震動増幅と杭周地盤ばねの履歴特性を、庁舎の杭-上部構造を連成させた梁-ばねモデルに取り入れて地震応答解析を行い、庁舎1階の加速度波形が観測記録と概ね対応すること、および杭-地盤間の剥離と強震動の連続入力が庁舎1階と杭の応答に影響を及ぼすことを確認した。 本年度はさらに、粘性土地盤模型を実験室で作製し振動台実験を実施した。粘性土地盤の作製においては、地盤材料の打設後に所定の圧力を長時間与えて締め固める「圧密」の過程が重要となるが、本研究では密閉容器を用いて空気圧を与える方法を開発した。地盤単独での複数回の振動台実験を通じて、本手法で作製した地盤模型の増幅特性は入力動の大きさに応じて著しく変化し、強非線形性がみられることを確認した。
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