胃癌はわが国におけるもっとも罹患率が高い悪性腫瘍の一つである。近年、検診の普及と内視鏡診断技術の向上に伴い、胃癌の早期発見の割合が増加し、根治が望めるようになってきた。しかし、未だに進行した状態で発見される症例も多く、有効な胃癌早期診断システムの開発が望まれる。 我々はこれまでに共同研究者として実施した文部科学省次世代がん研究戦略推進プロジェクトで得られたデータの中から、胃癌新規バイオマーカーを合計12 種類同定した。一方今回のプロジェクトで採用され、解析された胃癌患者サンプルは30数症例と少なく、胃癌におけるこれら候補蛋白の役割も不明であることから、バイオマーカーとして実臨床で用いることができるかどうかは未知数である。 本研究ではこれらの12種類の蛋白の中からより癌との関連が深いと思われるものを選定し、胃癌手術により得られた腫瘍組織検体における発現量と臨床情報との相関について調べる。また、胃癌患者および健常者ボランティアの尿および血中の発現量を測定し、臨床情報と照合することで新規バイオマーカーとしての有用性を検討する。さらには術後経過観察中や化学療法施行中の蛋白発現量の推移を解析することで、再発マーカーとしての有用性や治療効果判定における有用性についてもあわせて検討する。 臨床検体の解析により得られた結果を元に胃癌細胞株に対する遺伝子導入法を用いた蛋白の機能解析、遺伝子導入した胃癌細胞株を使用した動物実験による解析を行い、胃癌と同蛋白との関連性について明らかにすることを目的とする。
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