研究実績の概要 |
平成29年度の研究では、in vitroにおいてAnx A4 アンチセンスオリゴ(ASO)を投与した細胞ではAnx A4の発現が低下してシスプラチンのIC50が約50%低下し、それらの細胞においては、細胞内プラチナ含有量が保たれていていることを明らかにしたが、平成30年度においてはin vivoにおいてRMG-1、OVISEそれぞれを移植したマウスにPBSまたはシスプラチンを腹腔内投与し、コントロールASOまたはAnx A4 ASO(1mg/kg)を局所投与する4群の治療実験を行なった。結果、AnxA4ASOとシスプラチンを併用した群では他の3群に比して、腫瘍の増殖が有意に抑制された。同様の系を用いて、2回AnxASOを投与した腫瘍を摘出し、腫瘍内のAnx A4の発現をウエスタンブロットで確認した。ANXA4ASO投与群では、無治療、コントロール投与群に比して、有意にANXA4の発現が抑制されていることが明らかになった。またこれらの腫瘍組織の切片をCD49b抗体(NK細胞活性)、F4/80抗体(マクロファージ活性)で免疫染色し、抗腫瘍免疫とASO投与の関係性の評価を行なった。結果は免疫の賦活化は確認されなかった。これらの結果から、Anx A4 ASOは腫瘍免疫とは関係なく、直接的に抗がん剤抵抗性を改善し、抗腫瘍効果を発揮していると考えられた。 また、薬剤の効果、安定性を向上させる目的で、アミド型の架橋構造を持った人工核酸を新たに作成し,その機能をin vitroで評価した。結果はこれまでのANXA4発現抑制効果とほぼ同等であり、より強力な作用を得ることは困難であった。
|