研究課題/領域番号 |
17H06854
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
樋口 明里 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (60799188)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 高齢者 / インシデント / 転倒 / 実測値 |
研究実績の概要 |
本研究では以下の2つを主な目的とした。 1.大阪府下にある400床の慢性期病院における転倒多発病棟のインシデントレポートを解析し転倒の特徴を把握すること。 2.転倒リスクの高い対象者に対し様々な測定機器を活用し前向きに睡眠覚醒リズムの実測値を測定し、診療記録情報と統合して分析することで転倒リスクに関連する要因の実態を明らかにすること。 前述した目的を達成するためにインシデントレポート過去1年分を分析した結果回復期リハビリテーション病棟での転倒転落は81件、病室で発生したものは60件(74%)であった。病室での転倒のうち32件がセンサーマットなどの身体拘束を使用した上での転倒であり、転倒予防を目的に身体拘束を使用していても、そのアセスメントが十分でない可能性が明らかとなった。 次に回復期リハビリテーション病棟において転倒リスクが高いとされる入院直後の患者の身体状態・行動の実態調査を実施した。具体的には睡眠測定機器を用いて対象者の睡眠覚醒リズムを2週間測定し、同時に診療記録情報を収集し、対象者の転倒リスクに関する資料を作成した。測定実施後、病棟カンファレンスにて医療スタッフへ資料を提示し、ともにデータの解釈・評価を共有した。H30.4月より測定を開始し、合計27名のデータ収集を行い、うち8名分のデータを分析しスタッフと共に共有した。結果、本研究の対象者においては転倒が発生しなかったため、転倒リスクと転倒の関連は見出すことができなかった。しかし、対象者の睡眠・覚醒リズムは、安静度の変更によるADLの拡大や頻尿、便秘などの排泄状況、発熱に対するケアなどのイベントにより影響を受けている可能性が明らかとなった。以上の結果より、睡眠・覚醒リズムの実測値を用いて診療情報と統合して分析することで、対象者の転倒リスクに関連する夜間の行動パターンの実態把握が可能となることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H29.10月-H30.1月:長期療養施設における転倒予防ついて介入の特徴や効果、エビデンスについて評価するためにumbrella reviewを実施した結果について国際学会においてポスター発表を実施した。 H30.1月-6月:インシデントレポートのデータ収集を実施し、データ分析を実施。分析結果については学会で発表実施。論文作成については現在準備途中の段階である。 H30.4月:慢性期病院回復期リハビリテーション病棟での測定機器を用いたデータ収集とデータ分析、データフィードバックの実施。病院のスケジュールの都合上診療情報データ収集に時間を要したため、現在データ分析途中でスタッフへのフィードバックが完了していない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、まず対象施設におけるデータ収集に関する説明会等の予定が対象施設の業務上の都合で予定通り実施できず、遅れたことがデータ収集開始の遅れにつながった。また、データ収集・分析に関する人材の確保が不十分であったことが、研究遂行に遅れを生じ要因であると考える。そのため、今後は、研究開始前に対象施設の業務上の都合を考慮した打ち合わせ・データ収集に関するスケジュール調整を詳細に実施し、データ収集補助者の確保を計画に含めて実施することとする。
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