研究実績の概要 |
eラーニングに「学習者同士の繋がる仕組み」を導入することは,日常的な学習への取りかかりの継続に効果をもつ(Sawayama & Terasawa, 2015)。一方,学習開始前に,学習量に対する効力感を十分に高く有している学習者においては,「学習者同士の繋がる仕組み」が稼働する条件では,稼働しない条件よりも,学習量が抑制されることも明らかになっている(Sawayama, Sannomiya, & Terasawa, 2016)。一見,矛盾するように思えるこの二つの事象は,「学習者同士の繋がる仕組み」が,学習への取りかかりを促す一方で,学習への深い没入を妨げている可能性を示唆している。 このような背景のもと,本研究課題では,調査・実験により上述した仮説を検証するとともに,「学習者同士の繋がる仕組み」がポジティブに働く状況とネガティブに働く状況についての理論的整理を試みることを目的の一つとした。そして初年度は,この目的を達成するための調査・実験システムの開発に注力した。具体的には,「学習者同士の繋がる仕組み」を稼働させる群と稼働させない群の間で,プレテストからポストテストにかけての客観的な学習成績の向上の仕方に違いが認められるか否かや,「学習者同士の繋がる仕組み」が自身の学習に与える影響についての主観的な内省報告をデータとして得るシステムを開発した。このシステムでは,回答者は次の手順で回答を行う:(1)フェイスシート(各群共通),(2)プレテスト(各群共通),(3)学習用課題(「学習者同士の繋がる仕組み」の稼働群・非稼働群へ無作為割付),(4)ポストテスト(各群共通),(5)事後アンケート(各群共通)。開発したシステムについてはテスト試行を加え,正常に稼働することを確認した。
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