研究実績の概要 |
新規なNO合成関連因子の解析:前年度の研究を通して、新たにNO合成に関与する因子として同定した6-ホスホグルコン酸脱水素酵素(Gnd1)がNO合成に及ぼす影響を詳細に解析した。Gnd1の基質を供給する6-ホスホグルコノラクトナーゼSol3, Sol4二重破壊株において、NO合成がほぼ完全に検出できなくなった。しかしGnd1のパラログであるGnd2の破壊株ではほとんどNO合成量の減少が見られず、GND1遺伝子破壊株にプラスミドを用いてGnd1とGnd2をそれぞれ導入したところ、Gnd1の導入によってのみNO合成能が回復した。Gnd1およびGnd2のタンパク質発現量を解析・比較したところ、Gnd2はGnd1と比較して全長でのタンパク質の発現量が極端に少なく、タンパク質が不安定な状態で存在しているため、NO合成に寄与していないことが考えられる。 Dre2タンパク質分解機構:過酸化水素処理条件下でDre2 がMca1依存的にタンパク質量の減少が観察されるが、ストレス処理後2時間以降でのみMca1依存的なDre2タンパク質量の減少が観察された。Tah18-Dre2複合体の過酸化水素処理応答的な解離への影響は確認できなかった。Dre2過剰発現株は過酸化水素処理条件でストレス感受性を示す一方で、Dre2発現抑制株では生存率が顕著に増加し、Dre2タンパク質量に依存して過酸化水素処理条件での生存率が大きく変動した。しかし、蛍光標識カスパーゼ阻害剤VAD-FMKを利用して細胞内のカスパーゼ活性を測定したが、各株間において過酸化水素処理条件下でのカスパーゼ活性に大きな差は見られなかった。 本研究を通して、酵母において新たにNO合成にペントースリン酸回路が必須であることが示唆された。細胞内の還元力として働く一方、活性窒素種であるNO合成にも寄与する可能性が示され、非常に興味深い知見である。
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