研究課題/領域番号 |
17H06874
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
増木 新吾 島根大学, エスチュアリー研究センター, 特任助教 (80806894)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | ダム湖 / 富栄養化 / 窒素汚染 / 硝化 / 脱窒 / 深層曝気装置 / 貧酸素 / アオコ |
研究実績の概要 |
本研究は,ダム湖において導入が進んでいる深層曝気設備を活用し,ダム湖を高度処理浄化槽として機能させようというものである。すなわち,ダム湖深層水中の溶存酸素濃度(DO)を一時的に高濃度または低濃度に調整することで微生物による硝化脱窒作用を期待するものである。硝化脱窒は「高度処理浄化槽」において一般的に用いられている手法であり,その原理をダム湖に適用することで大きな問題となっている富栄養化に対する有効な対策になり得る。 本研究は2ヵ年計画であり,初年度は室内実験による硝化脱窒のための最適条件の検討,定常状態であるダム湖の水質の定期観測を実施し以下の結果を得た。1.硝化速度が最大になるDOの範囲はDOが4-10mg/L(n=3)であった。脱窒については0.5mg/L(n=1)であった。2.現地の定期観測の結果から,リンの再溶出を抑制するために必要なDOは1mg/Lと考えられた.3.上述の得られた結果からDOの上限値を4mg/L,下限値を1mg/Lとし,それらを組み込んだ深層曝気装置の運転プログラムを作成した。申請当初はDOの上限値を5mg/Lとしていたが,現地観測の結果からDOの減少速度を測定した結果,当初の想定よりも減少速度が遅いことがわかったため,上限値を4mg/Lへと変更した。4.作成した運転プログラムは現地に設置されている深層曝気設備の運転制御部に組み込んだ(6月以降,実証実験開始予定)。5.2年目に計画している現地実証実験において,現地のDOを詳細に観測する必要があるため,水質計自動昇降装置の観測データを研究室内から閲覧できるようPCを設置し,また深層曝気装置の運転制御も行えるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画において初年度に実施する予定であった項目は1.脱窒発生の定性分析,2.脱窒量の定量分析,3.リンの再溶出の閾値の確認であった。この中で,1および3については,室内実験および現地における定期調査により検証を行い,それぞれ結果を得ている。硝化速度はDOが4~10の場合,280~300μgN/L/dの範囲であった。脱窒速度はDOが0.5mg/Lの場合,1.0μgN/L/dであった。しかしながら2.脱窒量の定量分析については,定量的な結果を得るに至らなかった。その理由としては,現地における深層曝気装置の影響範囲が不明であり,影響範囲における脱窒量を推定することが困難であったためである。H30年度の現地実証実験において,深層曝気装置の影響範囲が明らかになった後に検証することとしたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究2年目は現地実証実験により,硝化脱窒による栄養塩の減少が現地において確認されるかについて着目し,またリンの再溶出の有無も含めて検証する。この点については,現地調査によって明らかにする予定である。さらには初年度に実施出来なかった脱窒量の定量的な把握に努めたい。また,申請者が作成した運転プログラムは現地から送信される観測データを基に自動的に作動する予定となっている。水質改善効果の明確化と全自動化による実運用上の問題点等の洗い出し・改良も併せて検証する予定である。最終的には深層曝気装置の従来の運用方法との運転費用等も含めて比較する。
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