発展途上国での航空輸送インフラストラクチャの積極的な開発は、騒音問題を含む空港周辺地域の環境に大きな影響を与えている。2009年にベトナムのハノイノイバイ国際空港(HNBIA)周辺において航空機騒音の住民反応を調査した。この時点での運航状態は安定的であったが,その後,2014年12月に新ターミナルビルが竣工したことにより、航空機の運用回数が増加した。竣工の直前に1回,さらに竣工後に2回、騒音レベルの段階的変化(step-change)による影響を調査した。その結果、段階的変化の直後に過剰な反応(excess response)が見られた。この過剰な反応は時間経過により減少するのか、あるいはその後も続くのかは不明である。そこで,段階的変化の約3年及び4年後にあたる2017年と2018年に追跡調査を実施した。
2017年の調査ではHNBIA周辺の航空機騒音の健康影響を評価するために、自己申告に基づくbody mass index(BMI)および血圧などの住民の健康状態のデータを収集した。さらに、2018年の調査では血圧計で血圧測定を行った。また,生活条件や周囲の環境に関する質問の代わりに、BMI、血圧、心拍数など、現在の健康状態に関する質問を行った。
2017年以前の調査では調査地区内で選定した住宅の屋根に測定機器を設置し、騒音レベルを7日間連続で測定した。また,予測計算でノイズマップを作成した。ノイズマップの作成に必要な運行状況のデータを実測で収取した。この研究結果では段階的な変化による過剰な応答は時間の経過とともに減少するように見えるが、同じ騒音レベルでは依然として2014年の竣工前と比べても反応が高いままである。夜間の運行便数の増加は睡眠の質に悪影響を及ぼす。ベトナムにおいて、夜間運航を制限し、航空機騒音を規制することで空港周辺地域の生活環境を保護することを考慮すべきである。
|