研究課題/領域番号 |
17H06880
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
河邊 憲司 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (60803856)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | メカニカルストレス / 頭頂骨 / Prx1 |
研究実績の概要 |
骨はメカニカルストレスにより応答することが知られているがその機序は明らかとなっていない。本研究では骨にメカニカルストレスを処置し,メカニカルストレス応答細胞の性質を明らかとし,メカノセンサー分子やメカニカルストレスを生化学情報へ変換するシグナル分子を同定し,メカニカルストレスの機序解明を目指す。 本年度はバネを用いた頭頂骨に対するメカニカルストレスの系の構築および,バネを用いていない無処置群のマウスを用いて骨芽細胞や軟骨細胞へ分化する細胞の性質の検討を行った。 バネの強度,長さ,頭頂骨に対する施術法の検討を行ったことにより,バネによる頭頂骨縫合の距離の変化はバネ強度や施術時間依存性が観察され,誤差は少なかった。また,頭頂骨切片に対するアルカリフォスファターゼ染色やコッサ染色により,バネの施術で骨形成誘導がおきていることが確認された。これらのことより安定的な結果を得ることができる系の構築が完成したと言える。 また,バネを施術していない無処置のPrx1-GFPマウス頭頂骨の細胞を用いて,フローサイトメトリー法によりPrx1陽性かつ特徴的なCD抗原を発現する細胞群を分離した。これらの細胞群をセルソーターにより単離・培養し,分化刺激処置後にarizarin redとalcian blueにより染色することで各CD抗原を発現する細胞群は骨芽細胞や軟骨細胞へ分化しやすい性質を有していることが明らかとなった。 我々はPrx1リネージの間葉系幹細胞が骨芽細胞へ分化することを以前に報告しており,本年度の結果からPrx1陽性な間葉系幹細胞がメカニカルストレスに応答して特定のCD抗原を表出する細胞となり,骨形成に関与する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
安定的な結果を得ることができるメカニカルストレスの系の構築に時間がかかったが,骨形成に関与する可能性を有する細胞の特徴的なCD抗原の発見が行えたことから進捗はやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
バネを用いたメカニカルストレスの系の構築が行えたことから,Prx1-GFPマウスの頭頂骨に対してバネを施術し,骨形成の増加及びPrx1陽性細胞のmigrationを観察する。また,メカニカルストレス応答細胞では転写因子であるYAP/TAZの核内移行や骨形成因子4の発現が上昇することが報告されていることから,Prx1とこれらの因子との共免疫染色を行い,メカニカルストレス応答細胞の特定を行う。さらに,メカニカルストレス施術後の頭頂骨から細胞を回収し,フローサイトメトリー法によりPrx1陽性かつ特徴的なCD抗原発現を有する細胞群の分布の変化を観察する。また,セルソーターによって単離した細胞を用いてシングル・セルRNAシークエンスを行い,遺伝子発現変化を評価してメカニカルストレス応答細胞の性質を明らかにする。メカニカルストレス応答細胞の性質が明らかになった後に,応答性を有する細胞を培養し,既存のメカノセンサー分子やシグナル伝達の評価や,シングル・セルRNAシークエンスから得られた情報を用いて新規メカノセンサー分子の発見を目指す。これらを行うことにより,メカニカルストレスによって骨形成が行われる機序の解明を行う。
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