研究実績の概要 |
Si, Ge架橋ビチオフェン(DTS, DTG)は、有機電子材料のπ電子系ビルディングブロックとして、広く研究が行われている骨格である。DTSやDTGを用いた過去の研究例では、Si, Ge上の置換基はアルキル基やフェニル基などのシンプルなものに限定されていた。申請者は、Si, Ge上の置換基に比較的共役の拡張したπ電子系を導入することで、DTS/DTG母骨格とπ電子系置換基との間でのエネルギー移動が可能となり、DTS/DTGに新しい機能性を付与することができると考えた。H29年度は、具体的に以下の実績を上げた。 ①比較的単純なπ電子系を置換基とするDTG誘導体の合成 Ge上にフルオレンやターチオフェンなど、比較的単純なπ電子系を導入した、新しいDTG誘導体の合成に成功した。当初の期待通り、これらの化合物ではDTG母骨格とπ電子系置換基との間でのエネルギー移動現象が観測された。一方で、ピレンを導入した系では多成分の発光が確認されたことから、DTG母骨格とπ電子系置換基のエネルギーレベルが極めて近接した系では、エネルギー移動が効率的に起こらないこともわかった。Si置換体であるDTS誘導体の合成も試みたが、残念ながら目的物は得られていない。 ②π共役系の拡張の試み 近紫外~可視領域でのエネルギー移動を可能にするため、DTG母骨格の共役の拡張を試みた。まず、ターチオフェンを置換基とするDTG誘導体の臭素化反応を試みたが、目的物は得られなかった。一方で、フルオレンを置換基とするDTG誘導体では、臭素化体を得ることができた。現在までのところ、フルオレン2量体を置換基に持つDTG誘導体の合成に成功しており、今後はDTG母骨格のπ共役系をカップリング反応によって拡張する予定である。
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