研究課題/領域番号 |
17H06894
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小武家 和博 広島大学, 病院(医), 医科診療医 (80805648)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 原発性アルドステロン症 / 内分泌性高血圧 / 副腎腫瘍 / DNAメチル化 / エピゲノム調節 |
研究実績の概要 |
原発性アルドステロン症(PA)は,最も頻度の高い二次性高血圧症であり,アルドステロン産生腺腫(APA) と特発性アルドステロン症に分類され,いずれの病型においても,高アルドステロン血症が高血圧をもたらすのみならず,心血管疾患や腎障害を高率に発症する.よって,RAA 系を介さないアルドステロン合成制御機構の解明は,極めて重要な臨床的課題である.アルドステロン合成は,複数のステロイド合成酵素を必要とするが,中でもアルドステロン合成酵素(CYP11B2) が律速酵素として知られている.近年,プロモーター領域のDNAメチル化は,細胞内シグナルを介さずとも,ホルモン合成に関与する遺伝子発現を調節することが報告された.そこで,DNA 脱メチル化と転写因子の相互作用で発現調節され,CYP11B2 発現を調節する因子が複数存在し,その標的因子または転写因子を介したCYP11B2発現調節機構を解明できると考えられ,本研究では,DNA 脱メチル化と転写因子 の相互作用による新規アルドステロン合成機構を明らかにし,PA や高血圧の新たな創薬基盤をつくることを目的とした. 当院で手術により採取されたAPAの遺伝子メチル化について、非機能腺腫と比較した解析を行うと、APAではそのDNAプロモーター領域に多数のメチル化変化が生じていることが示された。Bioinfomaticsによる解析により、低メチル化が起きている領域と、関係する遺伝子についてピックアップを行い、実際に発現が増加している因子について同定した。また、低メチル化がおきているDNA配列のモチーフ検索を行い、それに結合する転写因子について絞り込みを行った。候補としてあがった転写因子についてChIP-qPCRをもちいて、該当する遺伝子の低メチル化配列との結合について検討を行い、実際に両者が結合していることを証明し、標的因子の同定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
副腎皮質球状層に存在する、アルドステロン合成に関わる因子のうち、PCP4の発現が、アルドステロン合成酵素(CYP11B2)の発現に関与し、PCP4の発現レベルが、CYP11B2遺伝子のプロモーター領域のメチル化に関わることを明らかにした。さらに、転写因子CEBPAが低メチル化したCYP11B2のプロモーター領域にインタラクションすることを、ChIP assayにより明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
転写因子の発現調節によるアルドステロン合成の変化について検討する。培養細胞を用いた特異的阻害や拮抗による効果について確認をする。実験動物での同因子の発現調節によりモデル動物の確立や、それによる新規薬剤探索への応用を試みる。高アルドステロン血症を呈する高血圧モデル動物を用いて阻害剤の効果等について検討を行う。副腎皮質球状体特異的に転写活性化因子を発現するモデル動物などを用いたノックアウトモデルでの標的因子調節による表現型について観察を行う。標的因子の発現が困難な場合には、コンディショナルノックアウトマウスの購入も可能である。
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