原発性アルドステロン症(PA)は,最も頻度の高い二次性高血圧症であり,アルドステロン産生腺腫(APA) と特発性アルドステロン症に分類され,いずれの病型においても,高アルドステロン血症が高血圧をもたらすのみならず,心血管疾患や腎障害を高率に発症する.近年,プロモーター領域のDNAメチル化は,細胞内シグナルを介さずとも,ホルモン合成に関与する遺伝子発現を調節することが報告された.そこで,DNA 脱メチル化と転写因子の相互作用で発現調節され,アルドステロン合成酵素(CYP11B2)発現を調節する因子が複数存在し,その標的因子または転写因子を介したCYP11B2発現調節機構を解明できると考えられる. 当院で手術により採取されたAPAの遺伝子メチル化について、非機能腺腫と比較した解析を行うと,APAではそのDNAプロモーター領域に多数のメチル化変化が生じていることが示された.Bioinfomaticsによる解析により,低メチル化が起きている領域と,関係する遺伝子についてピックアップを行い,実際に発現が増加している因子について同定した.また,低メチル化がおきているDNA配列のモチーフ検索を行い,それに結合する転写因子について絞り込みを行った.候補としてあがった転写因子についてChIP-qPCRをもちいて,該当する遺伝子の低メチル化配列との結合について検討を行い,実際に両者が結合していることを証明し,標的因子の同定を行った.これにより標的である転写因子が低メチル化を介してアルドステロン合成に関与していることが示された.また遺伝子発現調節に関わるGPCRの遺伝子にも低メチル化が生じていることが,メチル化解析より明らかとなり,その発現増加がqPCRにより示された.
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