本研究では制御性T 細胞が産生する抗炎症性サイトカインinterleukin-35(IL-35)の抗炎症効果に着目し、根尖性歯周炎でのIL-35 の役割を解明することによって根尖性歯周炎病態メカニズムを明らかとし、IL-35を用いた新たな歯内治療法を確立することが目標である。 本研究では根尖性歯周炎の炎症性骨吸収に関与していると考えられているTh17 細胞、破骨細胞および好中球に着目し、根尖性歯周炎病変局所においてIL-35 がTh17 細胞の病変局所での分化、浸潤、破骨細胞活性化および好中球浸潤に与える影響について検討を行った。すなわち、根尖歯周組織構成細胞の一つであるヒト歯根膜細胞におけるIL-6およびIL-8産生に与えるIL-35の影響に関して実験を行った。 その結果、IL-35はTh17細胞が産生する炎症性サイトカインであるIL-17Aによって誘導されたヒト歯根膜細胞からのIL-6およびIL-8産生抑制した。IL-17Aはヒト歯根膜細胞においてp38 MAPK、ERKおよびNF-κBのシグナルを介してIL-6およびIL-8産生に関与することが明らかとなった。さらに、IL-35はIL-17Aによって活性化されたERKおよびNF-κB p65のリン酸化を抑制することが明らかとなった。 これらの結果から、IL-35はERKおよびNF-κB p65を抑制することでIL-17A刺激ヒト歯根膜細胞が産生するIL-6およびIL-8を制御することが明らかとなった。すなわち、制御性T細胞が産生するIL-35はTh17細胞が誘導する根尖性歯周炎における炎症性骨吸収を制御している可能性が考えられた。
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