研究課題/領域番号 |
17H06904
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
武川 恵美 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 助教 (50633872)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 非磁性 / Ti合金 / β型 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、MRIアーチファクトフリーTi-Bi合金を試作し、組成と磁化率および構成相の相関を調べた。 1.Ti-Bi合金の試作と評価 研究当初に計画していた手法でTi-Bi合金の試作を行った。まず、直径10 mmのTi棒の中心部をくり抜いて作製したTi容器にBi粒を充填し、アルゴン雰囲気・500 ℃程度で保持し、融解したBiとTi容器を反応させた。しかし、液相のBiはほとんど消費されず、Tiとの反応は確認できなかった。保持時間の増加や設定温度の上昇を試みたが、液相のBiがすべて消費されることはなく、この手法でのTi-Bi合金試作は困難であると考えられた。そこで、アーク溶解炉でのTi-Bi合金の試作に変更し、Bi=1.7~7.2 mol%の組成範囲でTi-Bi合金を試作した。 2.Ti-Bi合金の組成と磁化率および構成相の相関 Bi=1.7~7.2 mol%で試作したTi-Bi合金の磁化率は、約160~200 ppmを示し、Ti(磁化率約180 ppm)とほぼ同等の磁化率であった。Ti-Bi合金の磁化率は、Bi(磁化率-162 ppm)量が増加するにしたがって減少した。また、構成相はいずれの組成も単相であった。 以上より、平成29年度は、Ti-Bi合金を試作したが、Ti-Bi合金の磁化率は目標磁化率-9 ppm未到達であった。これは、Ti-Bi合金のBi量を増加させても構成相は単相で、Tiと同じ結晶構造であったことから、磁化率はTiとほぼ同等を示したと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は平成29年度に初めて取り組んだため、プロセス確立を優先しつつ、1.Ti-Bi合金を試作し評価する、2.Ti-Bi合金の組成と磁化率および構成相の相関を調べる、ことを目標としていた。 1.Ti-Bi合金の試作と評価 TiとBiは密度(Ti:4.5 g/cm3、Bi:9.8 g/cm3)の差が大きい、融点(Ti:約1600 ℃、Bi:約270 ℃)の差も大きいことから、均質に混ぜることは困難と予想されたため、Biのみ融解する低温での合金化を試みた。Ti容器の作製、金属の保持条件設定とTi、Biの拡散の評価、など試行錯誤を繰り返したが、合金化は困難であった。Ti-Bi合金作製過程での試行錯誤は予想以上に多く時間を要した。 2.Ti-Bi合金の組成と磁化率および構成相の相関 今年度作製したTi-Bi合金の磁化率は、目標磁化率-9 ppmまで低下させることができなかったが、Bi量の増加にともない磁化率が低下することが分かった。Ti-Bi合金は、常磁性元素(磁化率が正)であるTiに反磁性元素(磁化率が負)であるBiを組み合わせており、構成相は単相でTiと同じ結晶構造あることから、Ti-Bi合金の磁化率は純Tiよりも低くなると予測していた。しかし、組成によっては磁化率180 ppm以上を示す合金が存在し、純Tiよりも磁化率が増加した。合金の磁化率は構成元素の磁化率と組成に依存するが、必ずしも元素濃度に比例しないため、合金組成から磁化率を推測することが可能とは限らないため、解明する余地はあると考えられる。 以上より、Ti-Bi合金の試作、磁化率と構成相を明らかにすることができたため、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、さらにBi量を増加させたときのTi-Bi合金の組成と磁化率および構成相の相関を明らかにする。K.J. Qiu (Microstructure, mechanical properties, castability and in vitro biocompatibility of Ti-Bi alloys developed for dental applications:Acta Biomaterialia 15 (2015) 254-265)らによると、Ti-Bi合金のBi量を増加すると、Ti3BiおよびTi2Biが析出することが明らかになっているため、Ti3Bi合金、Ti2Bi合金の試作にも挑戦し、これらの合金が得られた場合は磁化率を測定する。もし、目標磁化率 -9ppmに未到達、あるいはβ型合金が得られない場合は、Tiの一部をZrに置換したTi-Bi合金の試作も検討する。 試作したTi-Bi合金あるいはTi-Bi合金のうち、目標磁化率-9ppmに達成可能でβ型合金となりうる組成が発見できれば、その組成以外のものも含めて詳細な評価を進める。評価対象は構成相(α相、β相、Ti3Biおよびその一部にZrが含まれるもの)、機械的特性(強さ、弾性率、伸び)、化学的特性(耐食性)である。機械的特性は、板状試験片を作製して引張試験により測定する。特にTi3Biの析出量は機械的特性には大きく影響する可能性があり、構成相との相関に注目する。なお、目標弾性率は80 GPa以下、降伏強度は600 MPa以上とする。
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