血清脂質は大血管障害抑制のため重要な治療ターゲットとされているが、糖尿病性腎症など細小血管合併症の発症・進展への関連や治療介入効果は明らかでない。本研究は日本人2型糖尿病患者において生化学的検査、生理検査、生活習慣、大血管障害、細小血管障害、使用薬剤の評価を実施し、横断的・縦断的に解析することで血清脂質が細小血管合併症の発症・進展へ与える影響を明らかにすることを目的とする。糖尿病性腎症の評価は推定糸球体濾過量(eGFR)および尿中アルブミン量を用い、日本腎臓学会の定義に基づいて行った。早朝空腹時尿中のアルブミン値を尿中クレアチニン値で補正したものを24時間尿中アルブミン量の推定値として用いる。血清脂質については早朝空腹時に採血を実施し総コレステロール、LDL-C、HDL-C、中性脂肪、レムナントリポ蛋白、Lp(a)を測定した。本年度は質問調査票を作成し、データ収集の体制を確立し、愛媛大学医学部附属病院に通院中の患者を対象としてデータの収集を実施した。既存データベースと統合した約800例での探索的な中間解析では多変量解析において糖尿病性腎症の有病率と血清中性脂肪との間に有意な正の関連がみられた。血清HDLは糖尿病性腎症と負の関連を示す傾向にあったが現時点では多変量解析での有意差はみられていない。各種脂質改善薬の内服と糖尿病性腎症の有病率との間には、現時点では有意な関連はみられなかった。更なる症例の集積を行い詳細な解析を行うことを予定している。
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