本年度は、幼児を対象とした二つの行動実験を行った。第一に、向社会的な他者に対する選択的利他行動について、前年度に行った実験をいくつかの点で変更し新たな実験を行った。実験では、はじめに向社会的な他者および向社会的でない他者の映像を参加児に提示した。その後、向社会的な他者、向社会的でない他者の両者に対して参加児自身の資源を分配する資源分配課題、どちらを好むのか評定する選好課題を行った。前年度からの変更点として、前年度では大人が向社会的な他者、向社会的でない他者を演じる映像を用いていたが、パペットが演じる映像に変更した。また、資源分配課題では分配相手への共感を喚起する文脈を付与した。上記のような変更を行った上で、3~6歳児を対象に、向社会的な他者と向社会的でない他者に対する選好と利他行動を調べた。その結果、向社会的でない他者よりも向社会的な他者を好む傾向は確認されたが、向社会的な他者に対してより利他的に振舞うような傾向はみとめられなかった。 第二に、評判操作と未来思考、心の理論との発達的関連についての実験を実施した。実験では、5~6歳児を対象に、他者に見られている場面、見られていない場面でそれぞれ資源分配課題を行い、見られている場面でより多くの資源を分配する評判操作が行われるか調べた。あわせて、誤信念課題と未来思考について調べる課題を行い、資源分配課題との関連を調べている。現時点では結論を得るのに十分な人数を調査できているとは言えず、更なるデータの蓄積が必要である。
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