研究課題/領域番号 |
17H06925
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
菅 史彦 九州大学, 経済学研究院, 助教 (20799556)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 労働経済学 / 構造推定 |
研究実績の概要 |
「構造推定」の手法を用いてライフサイクルモデルを推定し、推定したモデルを使ってシミュレーションを行うことで、制度・政策・経済環境が家計に与えた影響を明らかにすることが本プロジェクトの目的である。ライフサイクルモデルは、家計の長期に渡る意思決定の問題を分析するには有用だが、その推定には計算上の困難が伴う。そのため、高度な数値解析の技術に加え、計算用ワークステーションやスーパーコンピュータを用いた大規模な計算が必要となる。 本研究では、構造推定の手法を用いて、①バブル・低金利・住宅ローン減税等が家計の資産蓄積と長期の厚生に与えた影響に関する分析と、②介護保険が労働供給と家計の厚生に与えた影響に関する分析を行う。これらのテーマについては、その重要性にも関わらず、精緻で現実的なモデルを使った分析はほとんど行われておらず、制度・政策の設計に資する重要な分析結果が得られることが期待される。 平成30年度は、上記①のバブル崩壊前後から30年間にわたる家計の資産蓄積に関する分析を中心に進めた。分析用にワークステーションを購入し、プログラムの構築を行った。そのようにして構築したプログラムを、東京大学が所有するスーパーコンピュータFX10上で回し、計算を行った。また、データの利用のため、内閣府経済社会総合研究所に出張し、研究所内に設置されたスタンドアローン端末を使って、そこでしか利用が許可されていないデータを使って作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年度中に、①バブル・低金利・住宅ローン減税等が家計の資産蓄積と長期の厚生に与えた影響に関する分析と、②介護保険が労働供給と家計の厚生に与えた影響に関する分析を同時並行で進めて成果を出す予定であったが、①の研究においてプログラムの作成に当初想定していた以上の時間がかかってしまったことが、予定より遅れている原因である。そのため、まだ②に取り掛かれていない状況であるが、プログラム作成に伴う問題はほぼ解決しつつあり、今後作業の進度を早めてゆくことで、平成30年度中には完成させることができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
バブル・低金利・住宅ローン減税等が家計の資産蓄積と長期の厚生に与えた影響に関する分析については、既にプログラムのプロトタイプはできており、データのクリーニングも済んでいる。平成29年度は東京大学のスーパーコンピュータFX10を利用して計算を行ったが、FX10は稼働を終了してしまったため、新たに東京大学のOakforest-PACSを利用する予定である。Oakforest-PACSはFX10より計算性能が高く、より精緻な分析が可能になると考えられる。利用の申請手続きが済み次第、Oakforest-PACSに合わせてプログラムを修正・拡張し、それを用いて現実の制度・政策分析を行い、研究成果を学術論文として発表するとともに、研究会等でも報告してゆきたいと考えている。 介護保険が労働供給と家計の厚生に与えた影響に関する分析についても、速やかに利用予定である国民生活基礎調査データの利用申請を行い、データの整理・分析作業を秋ごろまでに終わらせ、結果を論文としてまとめる予定である。
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