リンパ球不死化前後に発現量が著しく変動することを見出した細胞老化因子ArfとB細胞増殖限界制御との関係性を明らかにすることを目的として、抗原特異的B細胞が抗原応答による増殖を開始してからの分裂速度と分裂回数を調べた。分裂回数を追跡可能な色素を充填した抗原特異的B細胞をレシピエントマウスへ経静脈移植後に抗原投与し細胞分裂を誘導した。抗原投与5日目にはほぼすべての抗原特異的B細胞が7回以上分裂を終えていることがわかった。次に抗原応答を模倣したin vitroのB細胞培養系で細胞老化因子であるArfおよびInk4aの発現をmRNAおよび蛋白質レベルで調べたところ、一般的な予想に反しInk4aとArfの発現誘導のタイミングおよび発現のカイネティクスは互いに一致しないことがわかった。Arfのリンパ球癌化における役割を明らかにするため、C57BL/6マウス受精卵でArf蛋白質をコードするCdkn2a 遺伝子エクソン1βをCRISPR/Cas9で切断しノックアウトマウスを樹立した。Arf蛋白質の発現を1細胞レベルで検出するためのArfレポーターマウスを樹立するために、C57BL/6マウス由来ES細胞株のArf遺伝子座にtdTomato蛍光蛋白質をコードする遺伝子をノックインした細胞を複数クローン単離し、現在キメラマウスの作成中である。S1pr2-CreERT2マウスは共同研究先からの入手および繁殖に成功し、これからリンパ腫ドライバーマウスとの掛け合わせが進行中である。リンパ腫細胞のArfゲノム遺伝子座の配列解析を行なったところ、Arfをコードするエクソンへの変異は検出されなかった。
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