研究課題/領域番号 |
17H06949
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
坂本 泰基 九州大学, 大学病院, 医員 (10805261)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | OSCC / 浸潤 / 転移 / シグナル関連分子 / Wnt5a / Ror2 |
研究実績の概要 |
本研究目標は、ΔNp63βの制御下におけるWnt5a-Ror2シグナル経路を介したOSCCの転移の分子機構の解明である。転移を生じるためには、OSCC細胞が周囲組織を分解して浸潤し、脈管へ到達する必要がある。そこで、本年度の研究においてまず申請者は、細胞外基質分解能を持つMMP-2タンパクの分泌を確認するために、ゼラチンザイモグラフィーを行った。その結果、MMP-2の分泌はΔNp63βおよびWnt5a-Ror2によって制御され、OSCCの浸潤に関与していることが示され、転移機構の解明に重要な知見と思われる。 本研究における計画として、EMT形質を持たず、Wnt5aおよびRor2の発現を認めないSQUU-A細胞にWnt5aを過剰発現させたWnt5a過剰発現モデル、Ror2を過剰発現させたRor2過剰発現モデルを作製し、研究を進める予定であったが、過剰発現モデル作製に難航している状態である。そこで、recombinant human Wnt5a(rhWnt5a)をSQUU-A細胞へ添加して、EMT関連マーカーの発現量の変化を検索したが、Wnt5aノックダウン時と同様に発現量に変化を認めなかった。また、Wnt5aをノックダウンしたSQUU-B細胞においてのみrhWnt5a濃度依存的に浸潤・遊走能の亢進を認めた。このことから、Wnt5aは受容体であるRor2とシグナル経路を形成して、EMTとは関連せずにOSCCの浸潤・遊走に関与していることが示され、シグナル経路形成の確証を得たことに意義がある。 また、Wnt5a-Ror2シグナル関連分子の検索のために、Wntシグナル経路における関連分子として報告されているDvl、Rac、JNK、RhoA、FLNa、c-Src、CdC42についてSQUU-A細胞およびSQUU-B細胞における発現量を検索したが、細胞間で発現量に差をほとんど認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究における計画として、EMT形質を持たず、Wnt5aおよびRor2の発現を認めないSQUU-A細胞にWnt5aを過剰発現させたWnt5a過剰発現モデル、Ror2を過剰発現させたRor2過剰発現モデルを作製して研究を進める予定であったが、過剰発現モデル作製に難航している状態であるため。
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今後の研究の推進方策 |
SQUU-A細胞におけるWnt5aおよびRor2の過剰発現モデル作製を引き続き進めていき、上皮系細胞マーカー、間葉系細胞マーカーおよびEMT関連分子の発現量変化の検索を行う。SQUU-A細胞における過剰発現モデル作製が困難である場合は、他のOSCC細胞の使用やrecombinant human proteinの使用も検討する。また、本年度の研究ではWnt5a-Ror2シグナル経路の下流における関連遺伝子の同定に至っていないため、引き続き検索を行う。 さらには、転移リンパ節組織におけるΔNp63、Wnt5a、Ror2およびMMP-2の局在の検索を行い、平成30年度の研究計画に沿って研究を実施し、Wnt5a-Ror2シグナル経路を介したOSCC転移機構の解明を行う。
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