OLPは、上皮と樹状細胞を主体とした免疫細胞との相互作用により病態形成している可能性が考えられる。本研究では、OLPの病態進展における上皮-樹状細胞間のネットワーク機構の解明を目的に、LMC(レーザーマイクロダイセクション)法により病変上皮を選択的に抽出し、DNAマイクロアレイによる疾患関連分子の網羅的解析を行った。それにより発現上昇を認めた遺伝子(76遺伝子)のうち、Th細胞の活性化に関連する分子として「カテプシンk」に注目した。カテプシンKはシステインプロテアーゼの1つであり、破骨細胞に発現しⅠ型コラーゲンの分解(骨吸収)を促進することが知られているが、近年の研究で破骨細胞以外の上皮細胞や樹状細胞、マクロファージにも発現しており、Th17誘導型の炎症にも関与していることが示唆されている。 OLP病変組織におけるカテプシンKの発現と局在の検索のため、免疫組織化学染色法を行った。その結果、OLP病変局所では粘膜上皮内と上皮直下の浸潤炎症細胞にて強い発現を認めたが、他の類似粘膜疾患(過角化症、上皮性異形成)では上皮直下の浸潤炎症細胞にのみ僅かな発現を認めた。カテプシンKはpDC細胞膜上にあるTLR9を標的分子としているため、蛍光二重免疫染色法にてその局在の検索を行ったところ、上皮内および上皮直下の浸潤炎症細胞の一部に発現の一致を認めた。また、Validation(real-time PCR)を行ったところ、正常粘膜組織と比較してOLP病変組織ではカテプシンKのmRNA発現の亢進を認めた。 以上の結果より、OLPの病態形成にはカテプシンKが関与していることが示唆された。
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