①低温細菌Shewanella sp. AS-11 由来の無機ピロフォスファターゼ(Sh-PPase)を大腸菌にて過剰発現し、精製を行った。Sh-PPaseは活性中心に2つのマンガンイオンを有するが、精製試料は金属結合体で無かったため、過剰量のMnイオンを含む緩衝液で活性化処理を行いEPR測定を行った。ところが、フリーのMnイオン由来のEPR信号に邪魔されて酵素由来の信号の解析が困難であった。そこで金属イオン活性化条件の再検討を行い、フリーのMnイオンを除去し、不純物のない活性型Sh-PPaseを精製することに成功した。この試料を用いて種々の条件でのEPR測定を行い、電子状態の解析を行った。解析結果より、2つのマンガンイオン間の距離が3.55Aであり、これまで明らかになっている2つのマンガンイオンを有する酵素と比較して非常に小さな磁気相互作用を持っていることを明らかにした。今後はこの活性化法を用いて、基質結合型での活性中心近傍の構造解析、さらに基質結合型、非結合型における活性中心の構造と酵素活性の温度依存性を明らかにしていく。 ②上記低温菌由来酵素との比較対象として、新たに中温菌由来無機ピロフォスファターゼの遺伝子を組み込んだプラスミドを作製した。またこれを用いて大腸菌での発現系の構築にも成功した。今後精製系をさらに精査し、低温菌由来酵素との比較実験を行う予定である。 ③Sh-PPaseの構造変化の温度依存性を直接観測するための変異体作製の設計を行った。今後数種類の変異体の発現・精製を行う予定である。 ④これまで開発してきた高速混合凍結装置について、さらに再現性良く試料の作製を行うため、ミキサー部の改良を行った。これを用いて現在試料のクエンチ時間の再構成実験を行っている。
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