研究課題
2017年度の結果から、DNA脱メチル化剤としてデシタビンに比べてアザシチジンがより強くATLの原因ウイルスであるHTLV-1感染細胞株に対して、抗腫瘍効果を発揮したため、2018年度はデシタビンに重点を置いて研究を行った。ゲノムDNA全体のメチル化の指標として用いられるLINE1領域のDNAメチル化をパイローシーケンス法により解析したところ、HTLV-1感染細胞にデシタビンを4日間処理した際の増殖抑制活性はその細胞の基底状態のLINE1メチル化状態に依存しないことが明らかとなった。この結果はゲノム全体のDNAメチル化状態ではなく、より局所的なDNAメチル化状態がHTLV-1感染細胞の生存・増殖に重要である、というこれまでの臨床検体を用いた解析結果から得られた仮説を支持すると考えられる。抗腫瘍効果と相関するDNAメチル化領域の探索のため、デシタビンの誘導体を用いた遺伝子発現マイクロアレイ解析を実施し、DNA脱メチル化に伴い発現が回復する遺伝子群を抽出した。その中には腫瘍抑制因子やT細胞の増殖を制御する因子が含まれており、現在、TaqMan法による確認作業を進めている。また、いくつかの因子についてはレンチウイルスによりHTLV-1細胞株に導入し、表現型を解析する予定である。慢性型ATL患者由来の末梢血単核球を免疫不全マウスの腹腔に移植することで腫瘍細胞の生着が確認された。現在、デシタビンの誘導体を用いてその抗腫瘍効果を検討している。これからの結果からHTLV-1感染細胞においてDNAのメチル化亢進異常はその生存に重要な役割を担っており、DNA脱メチル化による発揮される抗腫瘍効果はATLの治療や発症予防につながることが期待される。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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血液内科
巻: 78 ページ: 117-121