研究課題/領域番号 |
17H06963
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
吉見 知子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (20805973)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 咀嚼 / マウス |
研究実績の概要 |
軟食化ならびに社会の高齢化が急速に進むなか、「噛めない」「うまく飲み込めない」児童や、摂食(咀嚼・嚥下)機能障害を持つ高齢者が急増している。しかしながら、病因、病態が不明確なために、診断治療が困難な機能障害が多く存在する。パーキンソン病は、神経伝達物質であるドパミンの不足により、無動、筋強剛、振戦、姿勢反射障害を特徴とする進行性の運動障害を呈する疾患であり、顎口腔領域においては、症状の進行により摂食・嚥下障害を呈することが知られている。パーキンソン病の死因の約60%は誤嚥性肺炎であるという報告もあり、摂食・嚥下障害の機能改善が生命維持にとっても重要であることを示している。これまで、摂食・嚥下機能の評価や診断法の開発が進められてきたが、顎口腔領域の運動を司る神経筋機構の複雑さゆえに、摂食・嚥下機能障害に対しての決定的な治療法が確立されていないのが現状である。 本研究は、パーキンソン病モデルマウスを用いて、下顎運動・筋活動などの生体信号を記録することで、摂食機能障害の発症のメカニズムを解明することを目的とする。さらに、病因・病態仮説に基づいた治療戦略を構築し、その有効性を検証することを目指している。 本年度は、ドパミン神経細胞死を引き起こすMPTPをマウスに腹腔内投与し、パーキンソン病モデルマウスを構築して、摂食機能障害を明らかにするため、顎・舌機能データを収集する予定であった。しかしながら、揮発性の神経毒であるMPTPの扱いが難しく、本病態モデルマウス作製が困難であったため、計画を変更した。咀嚼機能に関わる神経機構には、GABA受容体が豊富に存在しており、感覚情報伝達や運動制御にGABA入力が大きな役割を果たすと考えられている。そこで、GABAの作動薬あるいは拮抗薬を用いて、摂食(咀嚼・嚥下)機能への影響を検証することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初、摂食機能障害を有するモデルとしてパーキンソン病モデルマウスを用いて、6自由度顎運動・筋活動を計測し、顎・舌機能データを収集することとした。しかしながら、MPTPによる本病態モデルマウス作製が困難であった。このため、計画を変更して、GABAの作動薬あるいは拮抗薬を用いて、摂食(咀嚼・嚥下)機能への影響を検証することとしたため、進捗状況は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ドパミン神経細胞死を引き起こす6-OHDAをマウスの線条体や内側前脳束に脳室内投与し、パーキンソン病モデルを作製する。 さらに、本病態マウスを用いて、6自由度顎運動・筋活動計測し、摂食(咀嚼・嚥下)機能障害発症のメカニズムを明らかにする予定である。
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