研究課題
申請者らは、化学放射線療法に抵抗性を示す腫瘍細胞はInterleukin-6(以下IL-6)を高発現し、IL-6シグナリングが活性化していることを化学放射線療法施行後の口腔扁平上皮癌(以下OSCC)患者検体を用いた免疫組織学的検討にて既に確認している。本研究において、OSCC患者におけるIL-6発現の臨床病理学的意義について明らかにするため、OSCC患者の術前の血液サンプルを使用してELISAを行い、IL-6の発現はOSCC患者のT stageと有意な相関を認めることが確認され、OSCC組織において、IL-6は腫瘍増殖に関与している可能性が示唆された。また、申請者がこれまでに明らかにしたOSCCのIL-6依存的な放射線抵抗性機構において、IL-6のKeap1-Nrf2システム活性化の詳細なメカニズムを検討する。本研究で、in vitro実験系においてOSCC細胞は時間経過とともにIL-6の細胞外分泌が増加しており、リン酸化STAT3のタンパク質レベルが増加していた。そして、IL-6シグナリング分子であるSTAT3の阻害剤を用いてIL-6-STAT3シグナル伝達経路を阻害した際のOSCC細胞の放射線感受性を検討したところ、コントロール投与群と比較してSTAT3阻害剤投与群では有意に放射線感受性が高いことが確認された。これらの結果より、OSCC細胞において、IL-6-STAT3シグナル経路が活性化することで放射線抵抗性に関与する可能性が示唆されたが、今後は、IL-6-STAT3シグナル経路を阻害することでNrf2抗酸化経路に及ぼす影響をさらに検討することを目指す。
2: おおむね順調に進展している
おおむね順調に進展していると考える。血液サンプルを使用したELISAを行い、OSCC組織において、IL-6は腫瘍増殖に関与している可能性が示唆された。また、IL-6のKeap1-Nrf2システム活性化機構の解明に関して、OSCC細胞においてIL-6は、オートクライン機構によりSTAT3の活性化に関与している可能性が示唆された。そして、放射線感受性試験を行ったところ、STAT3シグナリングを阻害することで有意に放射線感受性が増加した。これまでの申請者が得ていた結果とあわせると、OSCC細胞において、IL-6はKeap1-Nrf2システムおよびSTAT3を活性化することで放射線抵抗性に寄与する可能性が示唆された。
OSCCにおけるIL-6依存的な放射線耐性のメカニズムを、IL-6阻害剤であるヒト化抗IL-6受容体抗体 (トシリズマブ)やSTAT3阻害剤を用いてin vivo実験系において検討する。さらに、得られた腫瘍片サンプルを使用して新たなOSCC放射線抵抗性の分子ネットワークを解析する。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件)
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